2021年(1月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。シェア部門の第3位は、こちら!(初公開日 2021年7月5日)。

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 蓋を閉めずに会計ができるセルフレジの開発企業であるアスタリスク。そして、ユニクロやGUなど、傘下の店舗でその技術を利用したセルフレジを展開するファーストリテイリング。この2つの会社の間で、特許を巡る泥沼の争いが繰り広げられている。

 根気強くパテント料の支払いを求めてきたアスタリスクに対して、ファーストリテイリングは「ゼロ円での契約」を突き付けてきた末に、「特許に値する技術ではない」として特許庁に無効を訴えた。ファーストリテイリングの対応について、アスタリスクの鈴木社長に聞いた。(全2回の2回目。前編を読む)

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※セルフレジの特許を巡る係争については、2021年12月23日付で、ファーストリテイリングとアスタリスク、そして特許技術をアスタリスクから譲渡されたNIPにおいて和解が成立した。和解条件については公表されていないものの、「互いのそれぞれの主張はボタンのかけ違いから発生したもの」であり、「係争状態を長期化させることは、互いの事業の発展を阻害しかねない」ため、合意に至ったと連名で文書が発表された。

アスタリスクの鈴木規之社長。奥に見えるのがセルフレジだ。

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ファーストリテイリング、知財高裁で敗訴

 2020年8月、特許庁はファーストリテイリングの請求に対して「部分的に特許は無効」としながらも、「一部の特許は有効」と審決。これをファーストリテイリングとアスタリスクの双方が不服として、知的財産高等裁判所に上告。その結果、知財高裁は今年5月20日、アスタリスクの特許を全面的に認め、ファーストリテイリングは敗訴した。

 ファーストリテイリング側はセルフレジの構造について「従来からある技術によるものであって、他の業者でも容易に発明できる技術」だとして特許の無効を主張した。しかし、判決文の中で森義之裁判長は、「アスタリスクの開発したセルフレジの構造は他とは同一ではなく、発明は簡単ではない」と、あらためてその有効性を認めている。

 アスタリスク代表取締役社長の鈴木規之氏は、判決を振り返ってこう語る。

「判決が出るまでは不安でした。うちのスタッフに『勝訴』『一部勝訴』『不当判決』の3種類の紙を用意しておくように言っておいたのに、なぜか『勝訴』しか用意していなかった。社長は小心者ですが、社員のほうが強気なんです(笑)。でも、あの判決内容はうれしかったですね」

 

柳井社長との短いやり取り

 これに先立つ2020年11月26日、鈴木氏はファーストリテイリングの株主総会に出席し、同社の柳井正社長に質問をしている。

「色々と聞きたいことがあったので、前日の夜までかかって質問項目をまとめていたんです。ところが当日会場で『コロナ感染対策のため、質問は1人1問のみ』と言われて慌ててしまった。核心を突く質問もできず、的を射た回答も得られず、お恥ずかしい限りです」(鈴木氏、以下同)

 その時のやり取りは以下の通り。

鈴木 店舗のレジが、かなり使いやすくていい形になっていると評判です。これによって人件費や販売管理費を減らせているという記載を見たのですが、どの程度減らせているのでしょう。

 

柳井 正確な計算はしておりませんが、お客様にとっては非常に簡便になるといったことでございます。その経費は節約できるんですけれど、やはり商品のロス率といったことを考えると、経営的にプラスになる面だけではないのではないかと思います。