新型コロナウイルス感染症は、人々の日々の暮らしを一変させたが、実は犯罪の様態にも影響を及ぼしていた。警察庁が発表しているコロナ禍前後の犯罪統計資料や、警察庁への取材に基づき、コロナ禍における犯罪傾向の変化を読み解いてみよう。

 警察庁によれば、刑法犯の認知件数は2003年以降、一貫して減少しており、20年の刑法犯認知件数は61万4231件と、コロナ禍前の19年に引き続き戦後最少を更新したという。

 こうした刑法犯の認知件数等の変化について、警察庁はこう説明する。

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「我が国では、官民一体となった総合的な犯罪対策の推進や防犯機器の普及その他の様々な社会情勢の変化を背景に、03年以降、刑法犯認知件数の総数に占める割合の大きい街頭犯罪及び侵入犯罪が一貫して減少している」

 特にコロナ禍における21年上半期の刑法犯認知件数(暫定値)は27万7300件となっており、すでに一度目の緊急事態宣言が発出されていた前年同期と比べ9.8%も減少している。

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自動車盗や放火も減少傾向だが……

 こうした刑法犯認知件数の減少の理由について警察庁は、「現時点でお答えすることは困難である」と留保しながらも、こう推測している。

「20年における街頭犯罪の認知件数は、前年比で27.0%の減少と、減少傾向に入った02年以降で最大の減少率となっており、犯罪の発生件数の増減には様々な要因が考えられるものの、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う感染防止のための外出自粛についても、街頭犯罪の認知件数の減少の一因となった可能性が考えられます」

 こうした推測を裏付けるかのように、21年1~8月分の犯罪統計資料(暫定値)によれば、19年の同期で1107件だったひったくりは345件と激減。同じく、すりも2190件だった19年と比べて21年の同期は798件と半数以下となっている。

「ひったくりなど、街頭犯罪の減少の背景には人々がコロナ禍により出歩かなくなったことが考えられます。また、人々が街を出歩かなくなり巣籠りをしたことで、侵入盗や自動車盗などの重要窃盗犯、放火などの重要犯罪も減少傾向にあることが統計資料からは読み取れます」(社会部記者)