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 一方、コロナ禍前の19年と比べ、コロナ禍で目立ってきたのが詐欺や不審メール、マスク・消毒液転売などの新型コロナウイルス感染症に関連する事案だ。警察庁の「令和2年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」という資料によれば、新型コロナウイルス感染症に関連するサイバー犯罪が疑われる事案として、同年中に各都道府県警から警察庁に報告されたものが887件あり、内訳としては詐欺が446件で全体の50.3%と最も多く、次いで不審メール・不審サイトが135件で全体の15.2%を占めていた。

総務省を名乗った詐欺メール

 これらの不審メール、不審サイトの事例としては、「インターネットのショッピングサイトでマスクを注文して、指定された口座にお金を振り込んだが、商品の発送日を過ぎても出品者から連絡がなく、商品も届かない」といった詐欺や、「総務省を名乗り、『2回目の特別定額給付金を支給する』という内容のメールが届いたので、指定されたURLにアクセスし、クレジットカード番号等を入力したところ、カード情報等が盗み取られた」などといった、コロナ禍においての救済措置に付け込んだフィッシング被害も確認されている。

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「21年上半期の新型コロナウイルス感染症に関連するサイバー犯罪が疑われる事案として、各都道府県から警察庁に報告のあった件数は109件と前年同期と比べ499件の減少となっていますが、悪質なショッピングサイト等の通報件数は前年同期と比べ1516件も増加しています。こうした現状がサイバー空間における脅威の大本を特定・軽減・無効化することを目的に設立された『一般財団法人日本サイバー犯罪対策センター』の分析に表れていると警察庁は指摘しています。

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 こうした悪質なショッピングサイト等の増加傾向は、新型コロナによる巣籠りの増加でインターネットの利用が増えたことが背景にあると考えられます。今後もインターネットを通じた巣籠り需要を狙った悪質なサイトは感染拡大にともない増える可能性があるので、消費者は注意が必要です」(前出の社会部記者)

 コロナ禍におけるサイバー犯罪は、一般のネット通販利用者だけではなく、テレワークに用いるオンライン会議システムのセキュリティの弱さを悪用したとみられる事例も確認されているという。

 このように、警察庁への取材や統計資料などからは、コロナ禍により国内においては街頭犯罪や侵入盗などは減少している一方で、サイバー犯罪が多様化している傾向が浮かび上がってくる。