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佐藤輝明の最適ポジションは右翼手? 三塁手? それとも…ミスタータイガース掛布雅之が考える“未完の大器”の未来像

『阪神・四番の条件 タイガースはなぜ優勝できないのか』より #2

2022/01/03
note

 巨人のONではないが、スター選手には内野の一塁・三塁を守らせるという観点もある。内野のほうが野球のリズムをつかみやすいという利点もあるだろう。

 
 

 

自分でカウントを作るべし

 佐藤は、自分が感じて変えることもあるし、周囲の打者を参考にしていることもあるだろう。たとえば、オールスターゲームで柳田悠岐(ソフトバンク)の打席を間近で見て感じたこともあるだろうし、何かアドバイスを受けているかもしれない。

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 柳田というと、2015年に三浦大輔(DeNA)からの一撃が、横浜スタジアムのバックスクリーンを破壊したシーンはいまも鮮明に思い浮かぶ。

 強く振る柳田は三振も多いが、本塁打も四球も多くて、何より打率を残せる。2015年、18年と首位打者に2度輝いている。

 そういえば、その7月17日のオールスターゲーム。2段モーションの左腕からストレート、スライダー、チェンジアップ、カーブを繰り出す宮城大弥(オリックス)との対戦。3月20日のオープン戦では緩急を駆使されて、佐藤はいいようにあしらわれたが、オールスターゲームではストレートをレフトに本塁打を放ち雪辱を果たした。

 森下暢仁(広島)や宮城の「緩急」への対応に見るように、佐藤はもともと変化球打ちがうまいところにきて、さらに著しい進化が見られる。

 バッティングにおいて、「完璧に打つ」ことは難しい。

 ストレートを待って、ストレートを完璧に打つことはできる。

 変化球を待って、変化球を完璧に打つこともできる。

 変化球を待って、ストレートを打ちにいけば、少し差し込まれる。

 ストレートを待って、変化球を打ちにいくには、打撃フォームを少し崩す。

 崩されるのではなく、変化球を打つために自分で崩す。これがいちばんいいフォームだ。「自分から崩れる」ことをわかりだしている。これも「修正」「対応」の延長線上にある。

 8月13日に再開したペナントレース後半戦で、佐藤は立て続けに3本塁打した。

 田淵さんの球団新人本塁打記録を52年ぶりに更新する記念すべき23号は、8月19日に三嶋一輝(DeNA)から。このホームランも素晴らしかった。三嶋は内角を狙ったが、シュート回転して「逆球」となった外角低めだ。

 佐藤は当初の内角球に対応するために、腕をたたんでインサイドアウトでバットを出し、外角球になった投球をそのまま押し込んでレフトスタンドに持っていった。バットが遠回りする「アウトサイドイン」だったら、到底対応できていない。

 失投だが、それを打ち損じないで見事に一球で仕留めた。同じホームランを打つにしても、シーズン当初と比較して内容が進化を遂げている。