今後、投手のウイニングショットを打たなくてはいけない場面が出てくる。バッテリーにカウントを作られるのではなく、「自分でカウントを作れる打者」をめざしてほしい。
投手がもう投げる球種がなくなって、「打者が待っているだろう球種を一か八か投げざるを得ない状況を作って仕留める」という勝負だ。
ボール-ストライクのカウントは12種類ある。2021年、佐藤が本塁打を放った最多のカウントは「1-1」の8本だが、「0-2」2本、「1-2」7本、「2-2」2本と、2ストライクに追い込まれながら、実に約半分の11本塁打を叩き出している。
球団スコアラーが「投手の球種」「バッテリーの配球」のデータをたくさん持っているし、佐藤が試合中にノートに何かメモしている姿を見たことがある。双方の中身がイコールになっていくと、さらに自然と本塁打数も伸びていく。
同じく「走者なし」の場面が16本だが、すでに満塁本塁打をマークしているように、走者を置いた場面での本塁打も今後増えていくだろう。
バースのように三冠王を獲れる
2021年シーズン、佐藤は126試合に出場し、球団新人本塁打記録の24本、101安打で打率は.238だった。プロ1年目の野球だと考えたら、もう合格点をあげていい。
ここから打率を上げていくには、積極的なボールの見極めが大切だ。バットのヘッドをうまく使い、打ちにいってもボールになるきわどい球を見極め、四球を選ぶ。打っても安打にならない難しい球には手を出さず、安打になる確率の高い球を見逃さずに打つ。
しかし、これはいちばん難しい。これができるようになると、ホームランだけを打つバッターではなくなる。そうすれば、相手のピッチャーからすると非常に怖い、嫌な打者になれるだろう。
佐藤はそういう安打が増えてきた。打率3割がひとつの成功だと考えた場合、7割の失敗の内容がよくなってきた。失敗と成功のギャップが埋まってきているのだ。
「3割の成功」と「7割の失敗」と言ったが、成功と失敗にギャップがある打者は、結局は3割を打てない。成功と失敗のギャップがない打者が本当の「3割打者」なのだ。
8月29日、佐藤は24打席ノーヒットでスタメン落ちした。誰もが一度は経験する、決して避けては通れない道だ。いろいろ心配もされるだろうが、ここまで数字を伸ばしてきた佐藤が、2022年以降さらにどうやって対応していくのか、僕には楽しみしかない。
佐藤は、将来「5代目ミスター・タイガース」になれる。僕がどうこう言わなくても、続けることによって自然にそうなっていくだろう。バースのような三冠王を獲れる打者になる。現在はその過程である。
【前編を読む】《掛布雅之が徹底解説》2021年シーズン一時は規定打席到達打者中の“最低打率”…それでも大山悠輔を四番で起用し続ける“確かな意義”とは