ぼくは毎日銭湯に通っているのですが、ここ数年、若い方々の姿をよく見かけるようになりました。
しかし彼らに「風呂なしアパートに住んでいるから」といったリアルな様子はなく、単純に「未知なる楽園を見つけた!」、いま風にいえば「やべえぞ、ここ」、そんな嬉々とした風情がうかがえます。若い世代にも広がる昭和歌謡のひそかなブームも、じつはこうした感覚だったり?
娯楽がどんどん複雑化して、おのおのが一人で楽しむツールが中心となったように見える世の中にあって、老若男女が集い、一庶民として人情をたんまり共有できる場所。昭和の流行歌にもそんな共通項が垣間見え、このアナログ感=“暖かみ”こそが、いま昭和歌謡が求められている源泉なのではないでしょうか。
YouTube、TikTokでは、次世代による昭和歌謡のカバーが
ちなみに、ぼくは最近のいわゆるJポップをまったく聴いておりません。ただ、聞くところによれば、YouTube、TikTokでは、次世代による昭和歌謡のカバーが目立ち、さらにはツイッターやインスタグラムなどで紹介されることで拡散、共有されているそうです。
たとえば「レコチョク」におけるある日のランキングでも、一位に尾崎紀世彦「また逢う日まで」、二位に太田裕美「木綿のハンカチーフ」がランクインし、そこにジュディ・オング「魅せられて」、いしだあゆみ「ブルー・ライト・ヨコハマ」が食い込むという昭和戦国絵巻が……。と、ガラケーでちまちま打っているぼくは、比較論的なことなどをエラソーに語れる立場にないことを、あらかじめお詫びしておかなくてはなりません。
ただあくまで、お店の有線などで耳にする“イマドキらしい曲”の数々は、ぼくにとって詞もメロディも何だかこう「沁みない」、「入ってこない」というのが正直なところなのです。