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紅白は「打ち切り危機」をどう乗り越えてきた? オワコン説とともに進化してきた“苦闘の歴史”

J-POPから見るニッポン

2021/12/27

今なら炎上!? 昭和時代の“ディスり合い”

 しかし「司会」に呼び方を統一するとなると、「勝敗」も無くなってくる気がする。すでに歌合戦というより「宴」に近いし。

 振り返ると、昭和の紅白歌合戦はすさまじかった。1951年の紅白歌合戦では、東八郎と伊東四朗が殿と家臣に扮して登場し、応援で紅組を指して「あれは燃えないゴミでございます!」と言い放っていた。今やると炎上案件である。

 1975年には、水前寺清子が「大勝負」という楽曲で出場。この歌は「一つ男は勝たねばならぬ」という白組を応援するような歌詞から始まる。しかし紅組キャプテンの佐良直美は曲紹介で「『一つ男は勝たねばならぬ』。しかし紅組女性軍は3年連続、勝ちっぱなしでございます!」とこの歌詞をわざと挙げ、逆に紅組の連勝をアピールするという神業を披露。

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 1977年の紅白では桜田淳子が「気まぐれヴィーナス」で出場。この際「去年のトマトは青くて固かったわ」という歌詞を「去年のトマトは白くてダメだったわ!」と変えて歌い、白組を睨むパフォーマンス!

 一億人御意見番状態の令和はこんなディスり合戦、もう無理だろう。

MISIAは東京五輪開会式で国歌斉唱を担当した ©AFLO

大泉洋と川口春奈の司会も楽しみ!

 昨年から続き今年も司会を務める大泉洋の存在感は、まさに新時代の理想。視聴者が気になるだろう点をその場で先にツッコみ笑いにする。この「瞬時にボヤくスキル」は、炎上回避の素晴らしいクッションとなるはずだ。

 共に司会を務める川口春奈も堂々としたイメージがある。名コンビっぷりが今から楽しみである。

 視聴率についてはもう録画機器も見逃し配信もある時代。「リアルタイム」にこだわらなくてもいい、と正直思う。しかしいつまでも「一番リアルタイムで観たくなる」番組であってほしい、と願ってしまう。我ながらファン心理は複雑だ。

 今年で72回目、毎回オワコンと言われながらも、なんだかんだと話題に挙がり続ける紅白歌合戦。時代に振り回されつつ進化していく様子を楽しみに観ていきたい。

今年で第72回を迎える紅白歌合戦(番組ホームページより)

 しかし繰り返しになるが、「ももいろ歌合戦」の出演者も気になる。Da-iCEと松崎しげる、MAX、吉田栄作も出るのか! パソコンを近くにセットし、並行して観るか。気が散るか……。

 この悩ましさも、ある意味大晦日の醍醐味。年越しにふさわしい、ワクワクするコンテンツが増えるのはありがたいことである。

  世界的にいろんなことがあった1年だからこそ、その終わりはステキな音楽でリセットしたい!

紅白は「打ち切り危機」をどう乗り越えてきた? オワコン説とともに進化してきた“苦闘の歴史”

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