ものまね四天王のモノマネをしていた
―― 学校ではモノマネとかはしていたんですか?
ホリ してました。小学生の時は友達の真似とかが多かったかもしれないですね。あと、平成に入って中学くらいの頃にものまね四天王ブームがすごかったんですよ。だからモノマネのモノマネですね。小学校1年生の時には将来の夢を「漫才師になりたい」って書いてるんです。僕、漫才師じゃないですけど、当時、漫才ブームだったので、お笑いはドリフも欽ちゃんも全部、漫才師だって認識してたんですよね。だから漠然とお笑いの人をリスペクトしたんだと思います。野球はやってたんですけど、野球選手になりたいとか、甲子園に行きたいとか、そういう夢は全くなかったです。
―― それよりもテレビに出たい?
ホリ あとは個人的に図工とかが好きだったんです。だから僕は、テレビか出版社にいきたかったんですよ。小学校高学年の時は「デザイナーになりたい」とか書いてて。何かを描くとか、何か作ったりとかをやりたいと思ってた。中学1年生の時も、「集英社に入りたい」と書いてましたね。まぁそれは『ジャンプ』が好きだったからなんですけど(笑)。
―― マンガの編集をやりたかったんですか?
ホリ それよりも企画を作りたいなって。だから話ずれるかもしれないですけど、「おたのしみ会」ってあるじゃないですか。今思えばよくできたなって思うんですけど、小学校1年の時に、僕が企画して『クイズ100人に聞きました』のパロディーをやったんですよ。当時クラス42人いたので、「クイズ42人に聞きました」っていう、全部アンケートをとって。小学校低学年でパロディーをするってなかなかじゃないですか。親と先生にめっちゃ褒められました。自分でオリジナルギャグを考えるよりも、笑いとるのにモノマネが有効だというのを気づいたときかもしれないです。
結局やってることは広告代理店と一緒なんです
―― 番組をモノマネしたっていうのが面白いですね。
ホリ 今思うと、片鱗が出てますね。だからそういう企画するのが好きだったかもしれないです。今でも、自分が企画してテレビ番組を作りたいという気持ちがありますね。そういうのはライブとか地上波じゃないところでちょっとやったこともありますけど、大好きですね。テレビでも全編は無理でも、僕が企画したことやって欲しいなって思います。だから芸人やってますけど、考え方は、ちょっと“裏”なんです。以前、広告会社で働いていたので、マーケティングを考えてなんか流行らせるのが好きなんです。これのいいところはこうだというのを見せたいみたいな。
―― それってまさにモノマネのやり方に重なりますね。ここを特化すれば流行るだろうっていう。
ホリ そうです、結局やってることは広告代理店と一緒なんです。この人は面白いとか、この人にこんなことをやらせたら面白いとか、パロディー。だからなりきるっていうのとはちょっと違うかもしれないです。だから今、これ流行ってるけど、昔こういうのが流行ってたのを今っぽく作り直したらいいんじゃないかなとか。逆にこうやって今カメラとかカット割りが多いから、これもっとカット割りもうちょっとゆっくりにして、とか。カットあんまり割らないで固定にした方がいいんじゃないかなとか。セリフ回しをもうちょっとゆっくりにした方が逆に今面白いんじゃないかなとか。そういうのを考えるのが好きです。ちょっとあまのじゃくですね。
―― それがマーケティングになってる。
ホリ と僕は思ってて。結局モノマネとかも、完コピはあまり自分の中で求めてないんです。アベレージですよね。みんなが思っているその人のアベレージを、イメージをやる。たぶん武田鉄矢さんの『贈る言葉』をそのままレコードの様にそのままやったら、ちょっとパンチねぇなって思っちゃうと思うんですよ。なぜなら若い時の武田さんは今と歌い方全く違うから。でも今の武田さんと昔の武田さんの中間ぐらいでやる。もちろん完コピでやるのってすごく大変なんですけど。でもなんかそういうマーケティングみたいなのが好きなのかもしれない。
―― 観てる人のイメージの平均を探る作業なんですかね。
ホリ たぶん100%全部シェアさせるって難しいじゃないですか。だから最大公約数をとってく。そういう数字で考えがちなところがあるかもしれないです。普通、タレントさんってもっと感覚的にいくじゃないですか。僕はそういう天才肌の人には絶対勝てないと思うので。
―― 戦略的ですね。
ホリ だって芸能界で活躍している人って、僕が言うのもなんですけど、やっぱちょっと変わってるじゃないですか(笑)。勝つ、勝てないとかいう問題じゃないけど、やっぱり、うまく体を入れ替えていかないと生き残れない。僕はたぶん、他の人とちょっとそういうとこは違うかもしれないですね。最初から天下取りたいとかいう志みたいなものはなかったんです。自分なりのパフォーマンスを、お笑いの世界で最大限出していけるような環境をつくることに、まずは専念していました。
#2 ものまね芸人・ホリが「まだお会いしていない木村拓哉さんに言われたい言葉」http://bunshun.jp/articles/-/5113
#3 芸人・ホリが明かした「テレビじゃできないものまねネタ」http://bunshun.jp/articles/-/5114 につづく
写真=杉山秀樹/文藝春秋