ナイジェリア人のぼったくりバーの潜入取材で薬を盛られ、違法売春に堕ちていく少女を目の当たりにする……。日本の裏社会に潜む外国人マフィアに接触し、その実態を取材したフリーライター、真樹哲也氏の著書「ルポ外国人マフィア 勃興する新たな犯罪集団」(彩図社)が発売から好評を博している。

 2021年8月には工藤会のトップに初めて死刑判決が言い渡され、裏社会に激震が走った。かつての勢いを失いつつある日本のヤクザとは反対に勢力を増す外国人マフィア。日本の深層を追ったノンフィクション作品から、一部を抜粋して転載する。

 北関東で多発した家畜窃盗事件にベトナム人不良グループが関与しているという情報をつかんだ著者。グループの正体を解明すべく、取材を進めることにしたのだが――。

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(転載にあたり一部編集しています。年齢・肩書等は取材当時のまま)

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元凶は外国人技能実習制度のいびつさ

 私は群馬県警関係者から話を聞いていて、ベトナム人不良グループに対する怒りの感情をほとんど感じることができなかった。それよりも外国人技能実習制度に対する深い悲しみの気持ちが伝わってきた。

※写真はイメージです ©iStock.com

 家畜窃盗を繰り返すベトナム人不良グループは許せないし、けしからない。それは至極、真っ当な意見だ。しかし、ベトナム人不良グループの台頭は、日本が国を挙げて実施する外国人技能実習制度のいびつさが大きな要因になっているのだ。

「今回の事件は予想以上に世間を賑わせました。不起訴になったベトナム人がいることで、群馬県警は大きな批判に晒されました。被害に遭った方々からすれば当然でしょう。ただ、他の真面目に働いているベトナム人が差別、偏見の目で見られることが私には耐えられませんし、外国人技能実習制度の問題点を改善していかなければ根本的に解決はしないと感じました。

 ベトナムが豊かになって日本に出稼ぎに来るベトナム人が少なくなっても、次の新しい貧しい国からの外国人に対象が変わるだけです。犯罪を是正することは、犯罪行為をした人間を取り締まることは勿論ですが、それと合わせてきちんとした待遇で外国人を迎える日本社会にすることだと思います。群馬県は外国人と共生する多文化共生を掲げて、来年2021年4月には条例もできる予定です。その理念を嘘ではなく、忠実に実践することが大切だと考えています」