警察関係者が捉え方によってはベトナム人不良グループを擁護するような発言をしたことが私には意外だった。
「家畜は売ったり、食べたりした」家畜盗難事件の真相
地道な取材を重ねていた私は、家畜窃盗事件で逮捕されたベトナム人不良グループのリーダー的存在である“群馬の兄貴”の関係者に会うことができた。小柄でスマートなベトナム人男性、グエン(仮名・30代)は、外国人技能実習生でベトナム人不良グループの一員である。見た目はどう見ても健全な外国人にしか思えない。
グエンは警戒心が強く、取材を依頼したが何度か断られた。結局、私の古くからの知り合いの中国人を通じて取材を受けてもらうことができた。取材場所は中国人が経営する防音仕様のカラオケスナックを指定され、音声の録音取材は禁止でメモ書きをするだけという条件を押しつけられた。グエンは日本語がおぼつかないので、通訳を入れての取材となった。
「ベトナム人、みんなお金に困っている。真面目に長い時間働いても、給料は少ない。雇用保険とか、いろいろ引かれて、10万円ぐらい。そこからベトナムの家族に送金したりする。送金するのは、ゆうちょ銀行が良い。手数料安い。送金したら、食事するお金も残らない。もっと稼ぎたくなる。
ベトナム人なら牛、豚、鶏、解体できる。ベトナムで教わるから。だから、家畜を盗むのは丁度良かった。群馬県、栃木県は田舎。警備も甘いし、カメラも無い。簡単に家畜を盗めた。盗んだ家畜は売ったり、自分たちで食べたりした。Facebookで売っていたのはミスだ。自分、そんなことしない」
これまでに暴力団関係者や警察関係者に聞いてきたように犯罪の背後には生活に苦しむベトナム人の姿があるようだった。
「警察も把握できていないのですが、盗まれた家畜はどこに消えたのですか?」
「盗んだ家畜をバレないで売れる場所がある。ヒントは日本人相手じゃない。日本人の店じゃない。自分は日本人を信用しない。あなたには悪いけど。だから、今回の取材で話すことも全部じゃない。友達の紹介だから仕方なく受けた。何かあれば私の人生、壊れる。あなた、その責任は取らないし、取ることもできない」