ナイジェリア人のぼったくりバーの潜入取材で薬を盛られ、違法売春に堕ちていく少女を目の当たりにする……。日本の裏社会に潜む外国人マフィアに接触し、その実態を取材したフリーライター、真樹哲也氏の著書「ルポ外国人マフィア 勃興する新たな犯罪集団」(彩図社)が発売から好評を博している。

 2021年8月には工藤会のトップに初めて死刑判決が言い渡され、裏社会に激震が走った。かつての勢いを失いつつある日本のヤクザとは反対に勢力を増す外国人マフィア。日本の深層を追ったノンフィクション作品から、一部を抜粋して転載する。

 著者はナイジェリア人不良グループに接触すべく、歌舞伎町を取材していた。そこに折よくナイジェリア人の客引きに声をかけられたのだった。著者は情報を得るため、体を張った取材を決意する。

ADVERTISEMENT

(転載にあたり一部編集しています。年齢・肩書等は取材当時のまま)

◆◆◆

「気に入れば、エッチーもできる」

「社長ー、元気? 1時間飲んで5000円」

 私は立ち止まって黒人を見る。スマートな体形にピチピチな白いTシャツとジーンズが似合っている。大手衣料品会社のユニクロなどの黒人モデルにいてもおかしくないオシャレな男だった。

※写真はイメージです ©iStock.com

「どこの国から来たの?」

「ナイジェリア。いろいろな国の女いるね。気に入れば、エッチーもできる」

 怪しいのは分かっていた。この辺りはナイジェリア人不良グループの客引きによる、ぼったくり被害が多発している。リスクはあるが取材になると判断した。

「飲み放題?」

 私は吹っかけた。ナイジェリア人客引きがニヤリと笑った。強引に握手をされる。ずいぶん潤いのない、乾燥した手の肌に感じられた。

「バカヤロー。飲み放題でいいよ。女のドリンクもコミコミだー。一杯、おっぱい飲んでー。楽しんでー。店はこっち。行くよー」

 交渉成立だ。私はナイジェリア人の客引きに連れていかれ、キャバクラやバーが数多く入っている有名なビルに案内された。カビとゴミの臭いが入り混じった歌舞伎町特有の雑居ビルに入る。テナント代も高く、競争も激しいため、店舗の入れ替えも早い。ここにどれだけの夢と欲望が吸い込まれ、絶望に変わっていったのだろうか。

「ここだよ。おっぱい楽しんで。俺は帰る。バイバイ」

 肩を叩かれた。ナイジェリア人客引きとはここでお別れらしい。頑丈そうなドアを開けられて、私は店内に放り込まれた。

 屈強な体型をした別のボーイらしき黒人が現れる。白いワイシャツがはち切れそうになっていて、これでもかと筋肉の隆々さをアピールしている。年齢は20代後半から30代前半ぐらいだ。まるで、総合格闘技で一世を風靡したボブサップのようだ。