「アニキー。楽しんでいってー」
ラテン系美女がテーブルの前で誘惑するようなダンスを踊り始めた。ドレスの裾を捲り上げて黒いTバックのパンツを見せてきた。私の顔に尻を近付けてくる。ナイジェリア人不良グループが経営すると思しきぼったくり店でどのようなことが起こるのか、自分で調査をするしかない。この時、私の財布には10万円程入っていた。私は財布から1000円札を3枚出して、ラテン系美女のパンツにねじ込んだ。
入り口近くで立っているボブサップを見ると、私に向かってウインクをしてきた。時計を見ると丁度22時ぐらいだ。入店してから約1時間が経過している。ラテン系美女がボブサップに両手でよく分からないサインを出した。
店員に羽交い絞めにされ、全身がミシミシと…
ボブサップにカラオケのデンモクを渡される。私はカラオケが下手だ。昔から音痴なのである。
「歌ってー。聞きたいー」
ラテン系美女がしつこく煽る。1時間を経過したのにかかわらず、ボブサップは声をかけてこない。延長料金はどれぐらいか分からないが、この先どうなるのか私は知りたかった。私は2012年にリリースされ大ヒットした韓国の歌「江南(カンナム)スタイル」を入れた。イントロが流れる。私は立ち上がり、大きな声で叫んだ。
「オッパンカンナムスタイル!」
私は適当なダンスをしながら歌う。ボブサップが陽気な手拍子をする。ラテン系美女も一緒に踊り出した。私の股間に尻を擦りつけてくる。なぜか、ボブサップがシャンパンのボトルを持ってきた。私は頼んだ覚えがない。
ポンッという音と共に、シャンパンが開けられた。シャンパングラスを手にした2人の外国人ホステスが現れた。勝手に席に着き、シャンパンを注ぎ出した。間違いなく、ぼったくりだ。しかし、私は咎めることなく江南スタイルを歌い続けた。
「もっと飲めー!」
その時、しつこく股間に尻を擦り付けてくるラテン系女性のパンツが私の指に引っかかった。ラテン系美女の尻が丸出しになる。
「アニキー! 駄目だー!」
ボブサップが私に掴みかかる。マイクを奪われ、背後から羽交い絞めにされた。抵抗するが、ボブサップは全く微動だにしない。私の全身からミシミシ軋む音がする。背骨が砕けてしまいそうだ。息が吸えない。声も出ない。苦しい。宙に浮かされた。これは本気でやばい。
「スケベー野郎ー!」
地面に投げ飛ばされた。私はぬいぐるみのように床に転がった。解放された。呼吸ができる。私が目をつむろうとすると、ビンタをされた。無表情のボブサップが、丸い目で私を見下ろしている。