ナイジェリア人のぼったくりバーの潜入取材で薬を盛られ、違法売春に堕ちていく少女を目の当たりにする……。日本の裏社会に潜む外国人マフィアに接触し、その実態を取材したフリーライター、真樹哲也氏の著書「ルポ外国人マフィア 勃興する新たな犯罪集団」(彩図社)が発売から好評を博している。
2021年8月に工藤会のトップに初めて死刑判決が言い渡され、裏社会に激震が走った。かつての勢いを失いつつある日本のヤクザとは反対に勢力を増す外国人マフィア。日本の深層を追ったノンフィクション作品から、一部を抜粋して転載する。
取材のために通い詰めていたフィリピンパブのオーナーと仲良くなり、著者はようやくフィリピン人不良グループとの接触に成功する。警戒心をあらわにする彼らに近づくために、著者は下着一枚でダンスを踊る羽目になった。しかし、苦労の甲斐もあり、不良グループのメンバーは著者に心を開くようになったのだ。
(転載にあたり一部編集しています。年齢・肩書等は取材当時のまま)
◆◆◆
2020年1月、昨年のフィリピンパブXでの初対面の挨拶では、ワインボトルの一気飲みを強要され洋服を剥ぎ取られるなど散々な目に遭った私だったが、フィリピン人不良グループの3人組と仲良くなり、信頼関係を持つようになっていた。そうして私がフィリピン人不良グループと関わるうちに知り得た事実は、マイケル、ジョン、グレイスが明らかな違法行為に手を染めていることだった。
マイケルは、日本で暮らして20年近くが経つ。マイケルは主に偽装結婚の斡旋をする仕事をおこなっていた。それは彼の生い立ちにも深く関係していた。
「母は偽装結婚。好きでもない日本人のジジイと…」
フィリピンの田舎の大家族の家で育ったマイケルは、とても貧しい暮らしを送り、父親を早くに亡くした。生活苦に喘ぐフィリピンの家族を養うため、マイケルは母親と妹と共に16歳で日本へやってきたという。
「俺の母親は日本のブローカーを通じて、フィリピンパブで働いて日本人のジジイと偽装結婚をした。家族のため、金のためだ。日本に来て、好きでもない日本人のジジイと一緒の家で暮らした。ジジイと母親がセックスしているのを見てきたし、まだ子どもの妹までセックスをされた。最低だよ。地獄だった。ジジイを殴ったら、日本に居れなくするぞって言われた。警察にも誰にも頼れない。強くなるしかなかった。
母親は何年か経ってブローカーとの契約が終わって離婚した。俺みたいな嫌な想い、他のフィリピン人にさせたくない。だから、俺はブローカーになった。今は昔と違って、タレントとしてフィリピン人の女が来るのは難しい。観光ビザで来て、偽装結婚するのがメインだ。それか、日本人の男との子どもを産めば、結婚しなくても日本で暮らすことができる。その方が、愛のない相手と生活するよりずっと良い」