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「この謎の女、何者だよ。水槽の中身、凄い額だよ」

「この女の後ろにある水槽の中身、凄い額だよ。アロワナとかガーとか。100万ぐらいはいくんじゃないかな。この謎の女、何者なんだよ」

 私は先輩に言われ、アロワナやガーについて調べた。アロワナは南米のアマゾン川や東南アジアの淡水域に生息する観賞魚だ。高額なことで知られており、成魚だと数十万円で販売される。種類や色によって価値が大きく変動し、数百万円代のアロワナもコレクターの間では売買されている。

 また、ガーは細長い口先が特徴的な大型の熱帯魚だ。アメリカやメキシコでの水域を中心に生息し、日本にも鑑賞目的で飼育されていた個体が捨てられたことによって各地の河川で目撃されている。値段はアロワナと同じく、種類や色によって変動し、高い物だと数万円~数十万円で取り引きされる。

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 私はソフィアに問い質した。高級魚を売って儲けていれば、私の金銭的な援助も必要ないだろう。

「いつもごめん。あれは一緒に住んでいる友達とやってるね。アロワナ、ガー、密輸してる。養殖も。いつまでもホステスできないね。年取ったら大変。私は洋服の専門学校行ってる。卒業して工場。給料安い。ずっと同じ作業。そんなの嫌だよ。

 私は貯金してブティック開きたい。自分の店を持つのが夢。そのため、真樹にも協力して欲しい。最近はアロワナ、ガーは警察が厳しいね。もう密輸やめるつもり。今やってるのメダカ。犯罪じゃない。育てて高く売れる」

 ソフィアは言い訳をした。傍目から見れば、Xはごく普通のフィリピンパブであるが、当たり前に犯罪行為をしているフィリピン人不良グループが出入りをし、ホステスのソフィアまでもが違法に働き、外来生物の密輸ビジネスまでおこなっていたのだ。

知られざるフィリピン人不良グループの実態

 一体、フィリピン人不良グループのメンバーは何人ぐらいいるのか。私はソフィアに聞いた。

「メンバーは30人ぐらい。私は若い方。日本のヤクザとも仲良い。ヤクザの有名なボス、会ったことある。よく都内に行って、ドラッグの取引をしているよ。

 フィリピン人のグループ、都内にもある。住んでいる場所でそれぞれ。私たち行くの、六本木、渋谷、亀戸、竹ノ塚とかかな。フィリピン人が多い場所。でも、日本のヤクザが強くて駄目な場所は諦める。錦糸町は危ない。ヤクザと喧嘩になったり、たまに他の外国人のグループとトラブルになったこともある。危険な場所は行かないよ。これ以上は言えない。真樹は日本人だから」

 この話もどこまでが本当なのかは分からない。しかし、ソフィアが最後に話した「日本人だからこれ以上は言えない」という言葉は、私には越えることができない壁があることを強く感じさせた。

「真樹のこと好き。家族みたいに思ってる。魚のこと話したの初めて」

 ソフィアは私の手を握ると、小指を絡ませてきた。体温が伝わってくる。

「パガコ。これ、フィリピン人の間で約束の意味。これからも仲良しでいてね」