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 一方で女性のグレイスも、ジョンと一緒にフィリピン人の多く集まるクラブなどで違法薬物を捌いていた。それ以外にも、若いフィリピン人の留学生をフィリピンパブに斡旋していた。グレイスも複雑な過去を抱えていた。

「日本人の男はいつもフィリピン人の女を下に見る」

「私は日本生まれの日本育ち。パパは日本人、ママはフィリピン人。昼間は服屋で働きながら、ダンサー目指してる。フィリピン人の女はホステスやれば楽なのは分かってる。でも、日本人の爺さんにケツ触られたり、酒注いだり。私はやらない。日本人の男はいつもフィリピン人の女を下に見る。母ちゃんもそうだった。

 私はフィリピン人が半分だから、小さい頃からいじめられて馬鹿にされてきた。本当にそういうの嫌だ。お金あれば、日本人の言うこと聞かなくていい。芸能人、フィリピンの人も多い。ダンサーで成功して、みんなを見返したい」

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 グレイスはフィリピン人のルーツを持つ女性であるために、日本社会で耐え難い屈辱を受けてきた。グレイスが非合法なビジネスに走った理由は、母親も自らも味わわされたフィリピン人に対する差別への抵抗からだった。

「ソフィアも私が店に紹介したんだよ。真樹は知らないかもだけど、彼女は留学生」

 笑いながら話すグレイス。ソフィアは日本生まれの日本育ちのフィリピン人ではなく、留学生として来日し生活をするフィリピン人だったのだ。留学生が風俗営業に分類をされるフィリピンパブで働くことは禁じられている。発覚すれば違法なので不法就労で逮捕されてしまう。しかし、ソフィアはそのような立場であるにもかかわらず、SNSでフィリピンパブで働いている姿を発信していた。私はソフィアに真意を聞いた。

「真樹、ごめんね。私のフィリピンの家族、とっても貧乏。フィリピンの家族にお金送るの足りなくて、ホステスしてるよ。店から絶対に内緒って言われてた。私何かあったら、入管にやられる。警察に逮捕される。オーナーから誰にも言うなって。お願いだから秘密ね」

ソフィアの裏の顔 密輸していた“あるもの”

 法律を破っていい理由にはならないが、ソフィアにも事情はあるらしい。

「グレイスは友達。警察が来ても、ホステスじゃなくて、客として遊びに来ている振りをすれば大丈夫って。逮捕できないみたい」

 さらに、私が調べていくとソフィアは不法就労以外の犯罪行為をしていた。ソフィアは外来生物の密輸ビジネスをおこなっていたのだ。それが分かったのは、ソフィアが私に送ってきた音楽に合わせてポーズを取る動画がきっかけだった。

「最近、このフィリピン人女性を取材しているんですよ」

 私はソフィアの動画を何気なく先輩に見せた。その先輩は、新宿歌舞伎町の裏社会ではそれなりに知られた人物である。すると、先輩からは想定外の返事をされた。