ドラマ『二月の勝者』(日本テレビ系)が最終回を迎えた。原作漫画は非常によくリサーチをして作られており、ドラマも原作に近い部分が多く、現実とリンクするところも多かった。特にリアリティがあるのが“転塾”して成績をあげていく上杉海斗のエピソードだ。

 塾を変えることを転塾という。成績が伸び悩む生徒の親が「今、通っている塾が合ってないのかもしれない」と転塾を検討するのはよくあることだ。

エリート塾に合わないのは“地頭”のせい?

『二月の勝者』の1回目放送分で、新小6生の上杉海斗はエリート塾、ルトワック(原作ではフェニックス)から、桜花ゼミナールに転塾をしてきた。彼の一卵性双生児の弟、陸斗はルトワックの一番上のクラスにいて麻布を目指している。

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 一方、海斗は最下位クラスでくすぶっていたので、母親が「この子は勉強に向いていない」と判断し、“緩め”の桜花に転塾したのだ。

 緩めとは、進度がゆっくりで授業や宿題で扱う問題もそうは難しくない塾のことをいう。同作では、ルトワックが難関校対策に徹した塾なのに対して、桜花は中堅校対策の塾である。ところが、桜花に転じて、海斗はぐんぐんと成績をあげていき、最後には私立中学のトップ校、開成を受験するまでになる。

ドラマ『二月の勝者』(番組ホームページより)

 一方で、『二月の勝者』原作では、こんな会話がある。

 桜花ゼミナールの全校舎の講師が集まるシーンで、新米講師であるヒロインが「各校舎で進学実績に差があるのはなぜか」と疑問を口にする。すると、先輩の講師達は「運だ」という。各校舎の講師達の能力に違いはない。それでも差が出るのは、生徒たちの生まれつきの頭の良し悪しだといいたいのだろう。だから地頭のいい生徒が入ってくるかどうかの運の勝負になると……。

 この理屈からすると、フェニックスで駄目だった海斗は地頭が良いとはいえないわけで、桜花に転じても伸びる見込みはない。しかしだ。『二月の勝者』と同じように、現実社会でも、塾を変えることで成績があがる受験生は少なくない。

塾によって差が出るポイント

「どの塾もその進度は若干違えど、教える内容は結局同じです」と話すのは、中学受験を指導する塾、スタジオキャンパスの代表で、『令和の中学受験』などの著者である矢野耕平さんだ。