12月26日、全日本フィギュアスケート選手権2021で2連覇を果たし、北京五輪代表に内定した羽生結弦。話題となったのは「4回転アクセル」挑戦だ。この前人未到の大技について羽生はどう考えているのか。かつて本人が語っていたことを、キャスターの長野智子氏が綴る。
◆ ◆ ◆
全日本選手権で、初めて4回転アクセルに挑んだ羽生結弦選手の姿を観ながら、私は感動とともに2017年にインタビューをした際の羽生結弦選手の言葉を思い起こさずにはいられなかった。
平昌五輪を約1年後に控えた当時、男子フィギュアスケートは多種類の4回転ジャンプが乱舞する「真4回転時代」へ、とさかんに報道されていた。そして4回転の中で当時誰も跳んだことがなかったのが「4回転アクセル」だった。
4回転アクセルを跳んだ場合の回転は?
そんな中、私がキャスターをしていた「サンデーステーション」(テレ朝系)は、羽生結弦選手をゲストで迎えることになりある企画を考えた。
「羽生選手が4回転アクセルを跳んだ場合の回転がどうなるのか、羽生選手の3回転アクセルのデータをもとに、CGでジャンプの分解イメージ写真を作れないだろうか」
番組は専門家に参加してもらって綿密なデータ解析を行い、あくまでデータ上の結果であることを前提に、踏切から最高地点、着氷までの等身大分解写真を羽生選手本人にスタジオで見てもらうことにしたのだ。
番組本番、さっそく4回転アクセルについて聞いてみると、羽生選手はすでにシーズンオフに何度か試しているとのことだった。
3回転アクセルより17センチ高く跳ばなければ
「なかなか難しいですね。アクセルジャンプは前に跳んで、そのまま回転を締めなきゃいけないので、頭を打つリスクだとか、やっぱり怪我をしてしまうリスクが存在しています」
特別に回転が難しいと話す羽生選手に、実はこんなものを作りましたとスタジオ全体に4回転アクセルを跳ぶ羽生選手の等身大分解写真を展開したところ、羽生選手は「おー、おーすごい! (写真と)一緒にやりたいですね」と、とても喜んでくれたのを覚えている。
専門家の分析によると、4回転アクセルを跳ぶには、3回転アクセルよりもおよそ17センチ高く跳ぶ必要があるとのこと。それによって、着氷は3回転アクセルより1.1メートル延びる。そのためには、助走のスピードを今より10%速くしなければならないという結果が出た。