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社員がテレワーク継続を望むのに「それを拒む経営陣たち」の本音とは

「創造的な仕事をするにはオフィス勤務」と語る社長も

2022/01/19
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社員はテレワークを大歓迎

 経営者・マネジャー・一般社員それぞれから、代表的・特徴的なコメントを紹介しましょう。まず一般社員から。テレワークを支持する意見が多く聞かれました。

「戻したくありません。いまオフィス出勤は週1回です。ゼロにすることも可能ですが、気分転換のために行っています。オフィスまで片道1時間かかるので、通勤がなくなってずいぶん楽になりました。家族と過ごす時間も増えました。運動不足で少し太った以外は快適そのものです」(IT)

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「戻したくありません。週1~2回、苦手な上司・同僚が出勤していないのを見計らってオフィス出勤しています。職場の人間関係が苦手なので、飲み会や会社行事がなくなり、最低限のコミュニケーションで済み、助かっています。コロナによって、以前はいかに無駄なことをしていたのか痛感しました」(エネルギー)

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「どちらとも言えません。担当業務を進める上で、テレワークでまったく問題ありません。マイペースで仕事できて、生産性が上がりました。ただ、私は独身なので、テレワークだと一日中一歩も家を出ず、リアルで誰とも話さないという日もあり、気持ちが滅入ります。同僚と馬鹿話するって意外と大切だと感じます」(サービス)

 テレワークが本格的に普及した一昨年は、業務が混乱する場面がよく見られましたが、やがて新環境に慣れてきて、円滑に業務を進められるようになりました。その結果、一般社員は、通勤の負担や人間関係の煩わしさが減るというメリットに注目し、テレワークを支持しているのでしょう。

マネジャーはテレワークに賛否両論

 次に、職場の責任者であるマネジャーのコメントです。勤怠管理・評価・育成といったマネジメント活動にどういう影響が出ているかで、賛否が分かれました。

「戻したいです。テレワークでは、部下の行動や意欲などを把握することが難しく、勤怠管理・育成・評価などを以前と同レベルに維持するために、労力がかかっています。調整のための会議が増えて、私の執務時間はかなり長くなりました。部下はテレワークを喜んでいるようですが、私はノイローゼになりそうです」(住宅)

「戻す必要はありません。テレワークに対応するため職務を明確にし、無駄な業務を減らした結果、職場全体の生産性が上がりました。オンライン教育が充実してきましたし、人事評価制度もかなり簡素化されたので、私の管理業務の負荷は以前とさほど変わりません。部下がモチベーションを保てているのかといった不安はありますが、テレワークは大成功です」(通信)

 従来、日本企業では、各社員の職務を明確にせず、集団で対応するという働き方でした。そして、職場のマネジャーがトラブル対応や部下の評価・育成(OJT)などを現場密着で手取り足取り進めてきました。テレワークで、この伝統的なマネジメント手法が通用しにくくなっています。

 上のコメントに見られるように、テレワークでも以前と同じやり方を続けようとすると、マネジャーの負荷が増えます。一方、テレワークに合わせて働き方や人事制度を見直すと、マネジャーの負荷は増えず、職場の生産性が上がるということでしょう。