東京都心部のオフィスマーケットの悪化が止まらない。毎月発表される三鬼商事の調査によれば、21年7月における都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の1フロア100坪以上のオフィスビルの空室率は6.28%。貸手借手の有利不利が決まる分水嶺とされる5%を上回る水準に悪化している。
加速するオフィスの縮小と解約
すでにコロナ禍の影響に苦しみ始めていた、前年同月の空室率が2.77%であったが、実に1年ほどの間に3.51%もの上昇は、これまでに例を見ない上昇幅である。
コロナ禍で多くの企業で通常勤務が制約され、オフィスの利用率が下がり始めた当初、空室率の悪化は、一部のIT、情報通信系の中小企業が業績悪化などを理由にオフィスの縮小、解約を行っているだけで、マーケットには一切関係ないというのが、多くの業界関係者の見方だった。中には大手ビル業者の首脳が、コロナ禍はむしろチャンス。社員同士のソーシャルディスタンスを確保しなければならないから、企業の増床ニーズが強まり、マーケットは活況を呈するとの頓珍漢なコメントまでがメディアには掲載されていた。
コロナ禍が騒がれ始めて1年半が経過する現在、オフィスの縮小、解約はむしろ加速しているのが現実だ。収束に時間を要してはいるものの、コロナ禍が一過性の感染症であることについては、多くの人々が共通して認識していることだ。一過性であるならば、企業はあわててオフィスを縮小、解約する必要はないはずだ。オフィスマーケットには一切影響がないとされた、当初の論拠はここにある。