新築ビルにも目立つ空室
もちろん現状では、契約を継続しなければならない立場にあるので、具体的にビルオーナーと交渉しているテナントの数は少ない。こうした表面的な現象だけを根拠に「うちには影響はない」と嘯いているビル事業関係者は多いが、内心ではこれから起こるかもしれない環境変化に心休まらない日々を過ごしていることも想像に難くない。
影響は今後オープンする新築ビルのテナント募集にも出始めた。21年7月の空室率は6.28%だが、これを竣工6か月以内の新築ビルについてみれば、空室率は11.42%に及ぶ。前年同月は2.13%だから、その変貌ぶりには瞠目だ。浜松町にオープンした世界貿易センタービルもまだ2割程度の空室があるという。また東京駅八重洲口にオープンした常盤橋タワーも満室オープンとはならなかったようだ。
後手後手のコロナ対策同様
一過性であるはずのコロナ禍が思っていた以上に、収束に手間取ってしまったことは業界としては大誤算だ。コロナ禍による緊急事態宣言の発令が、昨年の4月から6月の3か月だけで終わり、SARSや新型インフルエンザなどの騒動と同じく、収束していたならば、おそらくテレワークは臨時避難的働き方と位置付けられ、オフィスは活況を取り戻していたはずだ。
だが世の中が変わるときというのはこうしたものだ。
「え、そんなはずはない。なに、今に元に戻るさ。オフィスに人が来なくなるなんてありえない。だって今までだって、みんな来てたじゃないか」
あれ、今の後手後手コロナ対策とどこか似ているような気もする。2023年には都内は大規模オフィスが続々竣工を迎える。来年再来年と契約期限を迎える大型テナントの面積縮小、解約がだらだらと続く中、迎える23年の大量供給問題。
「これまでも2003年問題とか13年問題はあったけど、みんな乗り越えたさ。だから平気」などと、楽観していると世の中はある日大きく変わった姿として業界関係者の目の前に現れるかもしれない。変化を見通すのが今なのである。