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続く大型解約、ヤフーの代わりに入居するのは…

 ところが、最近では都内各所で大型テナントの面積縮小や解約が相次いでいる。ヤフーを傘下におくZホールディングスは、今般賃借しているオフィスの約4割に相当する3万平方メートル(約9000坪)を解約すると発表、世間を驚かせた。具体的には千代田区の赤坂見附付近にある、紀尾井タワーの7フロア、赤坂Kタワーの5フロアだ。ヤフーはIT、情報通信系のフロントランナーだが、多くの社員がテレワークを今後も継続する中、オフィスのあり方を根本的に見直すとしたものだ。ヤフーが解約したフロアに、この9月にスタートするデジタル庁が入居するとのことだ。オフィスが必要ないと考えたデジタル最先端企業が手放したオフィスに、DXを、国を挙げて推進するデジタル庁が入居するというのも何だか皮肉めいたものだ。巷で言われるようにDXが「電話」と「FAX」の頭文字にならないようにしていただきたいものだ。

 またDeNAは、渋谷ヒカリエに本社ビルを構えていたが6フロア約4000坪相当を解約、同じ渋谷にある渋谷スクランブルスクエアのWeWork内に移転。それまで2800席あった座席を4分の1の700席に縮小。コワーキング施設内に入居することでオフィス賃料という固定費を変動費に変えることで、大幅なコスト削減を図るものだ。

 縮小、解約の動きはIT、情報通信系だけではない。四大監査法人の一角であるデロイトトーマツは、千代田区丸の内にある、三菱地所の基幹ビルのひとつ、二重橋ビルの2フロアの解約を発表した。このビルは1フロアが900坪超であるから、1800坪を超える大型解約である。

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3年から6年しばりで動けない「解約予備軍」も

 だがこうした動きはまだ、「始まりの終わり」であるかもしれない。現在、多くの大規模ビルに入居するテナントの多くが、期間3年から6年程度の定期建物賃貸借契約を結んでいる。この契約は期限を迎えない限り、条件を変更することが基本的にはできない仕組みになっている。つまり、今すぐにオフィス面積を縮小、解約したくても、契約期限が到来しなければ具体的な行動に移せない状況にある。

 コロナ禍が始まったのが1年半前である。この期間中に期限を迎えた大型テナントは、オフィス面積の縮小、解約に舵を切れたが、その他の多くのテナントが、ひょっとすると膨大な解約予備軍になっている可能性もあるのだ。