婚約者が突如失踪
「同業者の飲み会があったりするんですけど、軽い人が多いというか、愛人にならないかと平気で聞いてくる人なんかがいるんですよ。そんな人たちに、じつは風俗で働いていたなんて言ったら、どうなるかわかりますよね」
とはいえ、10代で身を投じた風俗業界からいざ離れてみると、新鮮な感覚の連続だった。
「夜寝て、朝起きて、生きてるって感じがしますね。風俗で働いていると時間の感覚も一般とはちがうし、重いものを背負った人も多かったから。ほんとに別の世界だったんだなって……」
自分ではじめた飲食店というあらたな商売にも馴染み、交際も順調だった。2021年には結婚しようと彼とも話していた。
ところが、人生はうまくいかない。
つい数カ月前、男性がある日突然失踪してしまった。
「これまでの人生なんだったのかな、といまでも思います。すごいショックで。あの人がなんで失踪したのかはっきりさせないと、次に進むことはできそうにありません」
それでも、日々の生活は待ったなしだ。
「なんとかいまの仕事を頑張っていきたいですけど、コロナのおかげで飲食業じたいがどうなるかわかりませんからね。つらい世界ですけど、もしものときは風俗に戻るのもやぶさかではないです」
風俗は肉体と精神を酷使するハードな仕事だ。しかし彼女にとっては、いまも昔も何より手っ取り早く現金が得られる手段なのだろう。何の保証もないというリスクはある。でも、それはコロナ禍のいまとなってはある意味、飲食店も同じことだ。
小学生のころから体を武器に生き抜いてきたフーミン、31歳。この終わりなきコロナ禍に導かれて風俗の世界に舞い戻る日が、はたしてやってくるのだろうか。
かようにコロナは女性たちの人生にさまざまな影を落としているのである。
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