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 コムロソングは「Dream(夢)」と「Pain(痛み)」がよく登場する。この曲も「DEPARTURES=旅立ち」というタイトルだが、ヒロインはきっと旅立つ整理が出来ていない。思い出を美しく振り返り、一緒にいたいといいながら、届かない、届けられないもどかしさ。どこか「永遠に会えない相手」との語らいを思わせる。

 傷つきながらも夢を見る(見ないと生きていけなかった)90年代後半の少女たちの、寒さで白くなった吐息交じりの声が聞こえてくるようだ。

GLAYの世界観と重ね合わせてみると……

「DEPARTURES」から3年後、1999年に大ヒットしたのがGLAYの「Winter,again」。

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 GLAYは、雪に囲まれたところで過ごした人達しか描けない肌感覚みたいなものがサウンドに沁みている。最初のイントロから、乾いたマイナス何度の世界を感じる凄さ。松山千春の楽曲もそうだが、なんというか「本当の寒さを知っている人にはかなわないなあ!」と思ってしまうのだ。

「Winter,again」にも、勝手ながら「函館生まれの主人公」を想像してしまう。そして、「DEPARTURES」のヒロインと付き合っている、と妄想して聴くと、切ない遠距離恋愛が浮かぶのでおススメだ。タイムラグはこの際気にしないで!

「いつか二人で行きたいね 雪が積もる頃に」と彼女を想う北国の彼、「行ったことがないね 雪と遊びたいね」と、彼を想う都会のヒロイン。お互いが遠い窓の外、相手を想って雪を見ている……。

 ああ、たまらない。 勝手な歌の世界の重ね遊び、萌える!

天才・小室哲哉の本領発揮

 勝手に妄想をしたくなるほど、シーンが頭に浮かぶ「DEPARTURES」。この曲はそもそもJR東日本「JR Ski Ski」のCMソングとして作られたものだ。広告主の要望を聴きつつ、こんな切ない「物語」を作ってしまうことに脱帽である。

 二人が写った写真立ては「伏せたまま」。でも「そばにいてほしくて」。待ち合わせもできないままだが「いつだって想い出をつくる時には あなたと二人がいい」。

 もう別れているのか、遠距離恋愛なのか、それとも恋人はもう一生会えない、空の向こうの人になっているのか――。

 季節感を見事なほど活用し、いくつもの未来が想像できる世界に仕上げたのはまさに匠の技。天才・小室哲哉の描いた最高傑作の雪景色であることは間違いない。