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SNSで自分の意見が自由に発信できる今の時代は、表現や自己アピールがうまい人が本当に多い。ツイッターなどを読んでも嫉妬するほどだ。ただ、逆に一度発信したら、なかったことにできない。つけた足跡が、永遠に消えない怖さと隣り合わせだ。
思い出が溶けてなくならなくなった時代。過去が遠のく「寂しさ」は減った。その代わり白(ゼロからのスタート)は本当に難しく、その憧れは強くなっていくばかりだ。
“雪の向こう”にあってほしいもの
「雪の降る町を 雪の降る町を 思い出だけが通りすぎていく……」
最後に、昭和の名曲「雪の降る町を」(内村直也作詞・中田喜直作曲)の出だしの一節を。初出は1952年、私は後追いだが、ダーク・ダックスの歌声を覚えている。
幼少の頃「ゆ~きの降る町を~ワワワワ~♪」と、伴奏部分も一人で真似して歌ったものだ。
昭和の歌謡曲は覚えやすい。風景の描写に主人公の感情を重ねた歌詞が、シンプルなメロディラインに乗り、繰り返される。だからこそ聞き手は、自分の思い出や妄想を広げやすい。「余白」がとても広いのが特徴だ。
この歌は1番で「思い出」2番で「哀しみ」3番で「むなしさ」を雪と重ね合わせている。そして、こんな歌詞で幕が閉じる。
新しき光ふる 鐘の音
雪の向こうにあるのは、希望であってほしい。どの時代もその願いは変わらない。