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小室哲哉が描いた“雪景色の最高傑作”…26年前、globeは「DEPARTURES」で何を歌っていたのか

小室哲哉が描いた“雪景色の最高傑作”…26年前、globeは「DEPARTURES」で何を歌っていたのか

J-POPから見るニッポン

2022/01/23
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懐かしくも哀しい「粉雪」

 平成で、もう一つ特筆すべきは「1リットルの涙」のドラマの挿入歌として大ヒットしたレミオロメンの「粉雪」である。平成18年豪雪と呼ばれる大雪を記録した2005年から2006年の冬にかけてロングヒットを記録。2006年の年間ヒットチャートでは、KAT-TUNの「Real Face」に続き、堂々の第2位である。 

 改めて聴いてみると5分を越える大作。こんなに長いイメージがなかったのでちょっと意外である。

 メロディは1番、2番と大きく変わらないが、注目すべきは歌詞である。「粉雪」と「粉雪 ねえ 心まで白く染められたなら」「二人の孤独を」という部分以外、被る歌詞がゼロ。歌詞だけ読むと、男性がとつとつと懺悔するのを聞いている気持ちになる。

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 オフコースの「さよなら」(あれは冬の前だが)に通ずる風流で哀しい雪。平成の歌だが、なぜか懐かしい。同年のヒットに修二と彰の「青春アミーゴ」もあり、新たな歌の形を見つけるというより、どこかノスタルジィを求めていた時代なのかもしれない。

レミオロメン ©時事通信社

思い出が“溶けてなくならない”時代の名曲

 そして平成の終わり、2019年2月に「配信」という形でリリースされ、令和元年大ヒットとなったのがKing Gnuの「白日」だ。

「時には……」という歌い出しの数秒で、白い世界に放り出される感覚。それはリアルな雪景色、というよりは心象風景に降り積もる雪である。ドラマ「イノセンス 冤罪弁護士」の主題歌で、「冤罪と、未来への祈り」というテーマで歌詞を紡ぎ出したという。

 これが驚くほど令和の人間関係と重なる。自分に嘘をつかないことに対する強烈なこだわりと気迫。これまでの過ち、挫折、諦め、罪悪感を自分で自分にぶちまけ自問自答する。そして時々慰めてもみる。弱さをガーッと出して「真っ新に生まれ変わって人生一から始めようか」と叫ぶのである。

 曲の長さは4分13秒とさほど長くはないが、追いつけないほど上がったり下がったりめくるめくメロディに、ぎっしりと埋め込まれたリリック。もうカラオケで簡単に挑戦できないくらい複雑だ。「大勢の人に愛される」なんて期待していません、と突っぱねるような個の世界の自立、ズッシリと心に残る聴き応えと後味は、ぶ厚い純文学の如しである。