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 るいは今1970年代を生きていますが、これから高度経済成長期における特徴的「近代家族」として、父が仕事をし、母が専業主婦として家事育児に専念するような古典的な性別役割分業を基本とする家族のカタチというのも描かれていくかもしれません。

 そうすると、安子の孫となる3人目のヒロイン・ひなた(川栄李奈)が生きる時代(就職氷河期世代あたり?)をどう描くのかも気になります。1925年から100年を描くということは、2025年まで。大正から令和まで続くこの100年には、必ず私たちの生まれた年代が入ってきます。自分の生きた時代の社会の空気を改めて俯瞰した視点で確認できるのもいいですね。

 るいの名前の由来でもあるジャズトランペッターのルイ・アームストロングの名曲「On The Sunny Side Of The Street」はストーリーに絡んで度々BGMとしてかかります。その歌詞(邦訳)は「コートを掴んで、帽子を取って、心配事は玄関に置いて、日向の道へと歩き出そう。聞こえる?あの楽しげな音。あれは幸せな君の足音。ひなたの道を歩けば、きっと人生は輝くよ」という前向きです。

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 るいの父親・稔(松村北斗)の「子どもたちにはひなたの道を歩いてほしい」という、願いが込められている曲ですが、女性が「自由に、ひなたの道を歩く」ということが困難だった時代を思えばこそ、この歌は家に縛り付けられていた女性たちが社会へ出ていく歌のようにも感じます。

「家族とは」を改めて問い、新たな家族像を示す?

ドラマの語りを務める城田優。©文藝春秋

 母から娘へとバトンをつなぐ三世代100年の家族の物語といえど、すでに母(安子)と娘(るい)は決別した展開を見せている「カムカム」。「自分・母親・祖母」みたいに感情移入しやすいストーリーではありません。親から子に、経験すべてが伝わっているわけでもなく、愛情深い家族像を見せているわけではありません。きっと古典的な家族観を改めて賛美するようなつくりはしてこないでしょう。それだけでなく、血縁関係のみに縛られない新たな家族像すら示してくれそうな気がしています(現在、るいが竹村クリーニング店の夫婦と同居することで、血縁関係なく家族のようにちゃぶ台を囲む姿にも、その意思が感じられます)。