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今場所の御嶽海は何が違った? “13日目の相撲”に感じた大きな成長《“元安美錦”安治川親方の1月場所総評》

けっぱれ! 大相撲――2022年1月場所

note

 関脇御嶽海は申し分ない落ちついた攻めで白星を重ねていきます。

「今場所は期待できるな」と思う反面、気持ちが切れたように別人のような相撲をとることもあるので、心配でもありました。

37歳1ヶ月の玉鷲が横綱を止めた

 阿炎は先場所以上に勢いがあり、手が付けられません。突っ張る手の回転とスピードが速く、頭で当たる角度も申し分ない。しっかり力をつけてきた実力は本物でした。

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 順調に白星を重ねる横綱を誰が止めるのか。それを止めたのは、最年長37歳の玉鷲。

 入門してから一度も休場したことがない鉄人・玉鷲が、頭から鋭い当たりで照ノ富士をのけぞらせ、その後の下からの攻めで照ノ富士がバランスを崩したところを突き落とし。照ノ富士の連勝は23でストップ。37歳1ヶ月での金星は平成以降では2番目の記録です。すごいことです。ちなみに平成以降最年長は37歳3ヶ月で私、安美錦でした。

 いやぁ、あぶなかった(冷汗)。

照ノ富士(右)を突き落としで破った玉鷲 ©時事通信社

負けを引きずらなかった“御嶽海の成長”

 前半元気だったのは新入幕の王鵬、琴ノ若、豊昇龍。

 さあ、優勝争いが佳境を迎えた終盤戦。12日目を迎えた時点で1敗が照ノ富士、御嶽海。2敗が阿炎と、この3人に絞られてきた状況です。

 12日目に大きな動きがありました。御嶽海が阿武咲に、照ノ富士が明生に負け、2敗で3人が並ぶ展開になりました。これは面白くなってきましたよ?

 負けた御嶽海が引きずらないか心配でしたが、今場所の御嶽海は違いました。これまでは気持ちが切り替えられず、連敗してしまうことが多々あったのですが、負けた次の日の相撲がこれまでと格段に違い、我慢して相撲を取り、勝ちを重ねました。

 大きな成長だと思います。大関に近づいていった瞬間ではないでしょうか。