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今場所の御嶽海は何が違った? “13日目の相撲”に感じた大きな成長《“元安美錦”安治川親方の1月場所総評》

けっぱれ! 大相撲――2022年1月場所

note

 13日目に2敗同士で御嶽海と阿炎の対戦が組まれました。私は阿炎有利とみていました。短い相撲でしたが良い相撲でしたね。阿炎の突きを御嶽海は前に出て受け止め、横に動いた阿炎を、御嶽海が体を寄せて押し出し。

 私は立ち合いから距離感に注目していました。阿炎は手を伸ばし距離を取りたい。

 一方の御嶽海は体を密着させ距離を詰めたい。

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 勝負を決めたのは、阿炎のつっぱりを前に我慢して押していき、密着した御嶽海の動きでしたね。

優勝と大関をつかみ取る見事な勝利

 優勝争いは照ノ富士と御嶽海の2人に絞られたと思っていたら、照ノ富士に阿炎が勝ち、まさかの金星。千秋楽を迎え、2敗で御嶽海、3敗で照ノ富士、阿炎、琴ノ若の3人が追う展開になりました。久しぶりに面白い展開でしたよね。

 いざ迎えた千秋楽。照ノ富士は満身創痍でしたが、栃木山以来103年ぶりという「新横綱から3場所連続優勝」がかかっており、横綱として気迫だけで御嶽海の前に立ちはだかります。この千秋楽の一番に勝てば優勝決定戦に持ち込めます。

 お互い気迫十分での立ち合い。御嶽海が照ノ富士の右差しを徹底して許さず、一瞬のスキをついて懐に入り、体を密着させての寄り切り。

3度目の優勝を果たし、内閣総理大臣杯を授与される御嶽海 ©時事通信社

 照ノ富士としては、まわしに手がかかりませんでした。いや、かけさせてもらえなかった。この大事な一番で集中し、冷静に相撲を取った御嶽海は、優勝と大関をつかみ取る見事な勝利でした。

思わず声が出た対戦

 まずは御嶽海。優勝と大関昇進おめでとう。気持ちを切らさず15日間よく頑張ったと思います。新しい大関の誕生です。出身地長野県の方々もお母さんも喜んでいるでしょう。あの伝説の雷電以来227年振りの大関の誕生ですから。来場所は大関として真価が問われます。目の肥えた大阪のファンの前で良い相撲を期待したいです。

 ケッパレ御嶽海!!

 それと、阿炎と琴ノ若の3敗同士の対戦はいい相撲でしたね。阿炎と琴ノ若の良いところが凝縮された内容のある相撲でした。千秋楽はNHKラジオの解説をしていたのですが、放送中ということを忘れて思わず声が出てしまいました(笑)。

 それはまるでお腹一杯にラーメンを食べた後の、何ともいえない満足感。しばらく放心状態で解説ができませんでした。それほどに良い相撲でしたね。

 阿炎は今場所の相撲を来場所以降も取り切れば、一気に大関も夢ではないと思います。ケッパレ阿炎!!