みなさまのお悩みに、脳科学者の中野信子さんがお答えします。

中野信子さん ©文藝春秋

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Q この数年、極端に仕事ができなくなっていると感じています──48歳・シングル・会社員の女性からの相談

・私の仕事に、お客様から話を伺って記録に残すというのがあります。

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・新しい上司から「論理的に書けていない」と言われるようになりました。文章力については上司に薦められた論理的思考ができるようになる本で鍛え直そうと思っています。

・それより私が辛いのは、後輩の前で上司からダメ出しされていることだと思います。学生の頃は勉強もできるほうで、それなりの大学に入り、職場でも賢いと言われていたのが、ここへ来て崩壊したからです(今考えると、賢い=仕事ができるではないですよね)。

・私のプライドはズタボロだなあと感じてた時、テレビ番組で斉藤由貴さんに「私バカなんですがどうしたらいいですか」というような質問を受けた明石家さんまさんが「俺は自分がバカやとわかってるからね」と言っていました。私も変なプライドは捨てて、ちょっと自虐的な笑いにもっていって、ダメ出し後の職場の重い雰囲気を変えるようにしました。

・ですが、昨日また上司からダメ出しを受け、不意に涙がこぼれ落ち、自分でも「そんなに辛かったのか」とびっくりしました。

・更年期のせいか、読解力、記憶力が自分でも驚くくらいなくなっていて、常に脳ミソが熱くなってオーバーヒートしているような感じで、そのことも自分では思った以上にショックで傷ついてたんだと思います。

・上司に「元々文章力はないですが、最近は私の思うように頭が回らず、余計にご期待に添えていません」と伝えたいのですが、言い方によっては怠けているように思われそうで、悩んでいます。

・今、私の頭の中がどうなっているのか、それもわかれば、私の心の安定に役立つのかなと思い、ご相談しました。

最新話は発売中の「週刊文春WOMAN 2022年 創刊3周年記念号」に掲載中

「あなたの文章に欠けているのは、たった一つ」中野信子の回答

A まず結論からお話しします。あなたの文章は決して論理性や知性に欠けるものではない。欠けている点があるとすれば、たった一つ。読む人がこの文章をどう受け取るか、という受け手の視点だけです。