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川端友紀と楢岡美和、ふたりの日本代表選手が九州に女子野球チームを作った理由

文春野球コラム ウィンターリーグ2022

2022/01/28
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「いつかはホークスの妹分的な存在に……」

 そんな野球熱、ホークス熱の強い九州なのに、なぜ女子野球は盛んじゃないのか。そんな疑問も出てきた。NPO法人ホークスジュニアアカデミーは、九州沖縄地区の高校・大学の女子硬式野球部、クラブチームを対象とした「ホークスカップ クイーンズトーナメント」を2019年に初めて開催した。女子野球の技術交流の場、同地区の女子野球NO.1を決める大会としてタマスタ筑後で行われ、九州各県から8チーム(合同チーム含む)が参加した。ホークスとしても女子野球の発展に寄与したい考えだが、昨年、一昨年は新型コロナの影響で中止となった。また、この第1回大会で優勝した神村学園高等部は日本で最初に女子硬式野球部が出来た高校だ。女子高校野球“発祥の地”ともいえる九州で「もっと盛り上がってもいいのに」と川端、楢岡両選手は寂しい気持ちになった。この地に女子野球を根付かせたい想いは増した。

 そのためには九州ハニーズだけ盛り上げていけばいいわけではない。川端選手は「私たちのチームがキッカケになって九州各地にどんどんチームが出来てくれたら」と波及効果にも期待を寄せる。九州だけでリーグ戦が行えるくらいチーム数が増えることを望んでいる。

 九州ハニーズの目指す姿は「強くて憧れられるようなチーム」。九州ハニーズの“ハニーズ”はホークスのマスコットキャラクターであるハニーホークからとっている。ハニーホーク(通称ハニーちゃん)は運動神経抜群で野球が好きな女の子。いつもダンスパフォーマンスで観衆を魅了し、多くのファンや選手にも愛されている存在だ。そんなハニーちゃんのように、九州ハニーズもたくさんの人を女子野球で魅了し、九州の人々に愛され、応援されるチームを志す。そして、「いつかはホークスの妹分的な存在に……」と夢を描く。ホークスを意識するが故に“強くて憧れられる”というスタンスにもこだわる。チーム作りはまだまだこれからだが、大きな夢を抱きながら運営側も担う2人は準備に奔走中だ。

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「やっぱりNPBの力は凄いなと思いました」

 最近では、2020年に埼玉西武ライオンズ・レディース、2021年に阪神タイガースWomenとNPB加盟のプロ野球球団が設立に携わる女子チームが誕生した。そして、2023年から本格始動するとして読売ジャイアンツの女子チーム創設も発表された。女子野球が発展していく上で、この出来事には非常に大きな影響力を感じているという。川端選手は言う。「私たちが女子野球のワールドカップで世界一になったことは誰も知らなかったのに、ジャイアンツに女子チームが出来たというニュースは多くの人が知っていました。やっぱりNPBの力は凄いなと思いました」。

 この気運に乗って、「今こそ女子野球を」という思いは強い。川端選手は、現在無期限活動休止中の女子プロ野球に思いを馳せる。「野球をしている女の子たちの目指すべきトップの場所がなくなってしまった。いつかは女子プロ野球の時のように、試合数も確保できて、お金を出して観に来てくれた方々を前にプレーする場所が必要」と男子のプロ野球のように女子野球にも憧れの場所が存在すべきだと改めて感じている。まずは、NPBの力を借りて、「NPBの女子チームのリーグ戦が出来るような道を作っていきたい」と思い描いている。

 もちろん、簡単なことではないのは重々承知。チーム発足を発表してまだ1ヶ月経たないが、毎日練習、運営に追われて充実しすぎているそうだ。練習場所の確保、チーム着の準備、SNS、HPの運営、ファンクラブ、メディア対応……すべて自分たちで行っている。大変なこともあるが、全て貴重な経験と受け止め、一つ一つに感謝の思いを強くしている。ハニーズとして試合が出来る日には「泣いちゃうんじゃないか」と川端選手。今月29日、30日にトライアウトが行われる。是非、九州ハニーズのここからの船出に注目して頂きたい。

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