年末恒例の「ユーキャン新語・流行語大賞」が、今年もきょう12月1日の午後5時に発表される予定だ。すでに『現代用語の基礎知識』の版元の自由国民社および大賞事務局により30語がノミネートされている。今年は、そのなかから一般投票で選出する「読者賞」も設けられ、選考委員会の選ぶ年間大賞・トップテンとあわせて発表されるという。

 新語・流行語大賞は1984(昭和59)年、「日本新語・流行語大賞」として始まった(現在の名称になったのは2004年から)。当初は新語部門と流行語部門に分かれており、第1回の新語部門では、社会現象にまでなったドラマ『おしん』に由来する「オシンドローム」が、流行語部門では、イラストレーターの渡辺和博とタラコプロダクションの著書『金魂巻(きんこんかん)』に由来する「まるきん まるび」がそれぞれ金賞に選ばれている。その後、1991(平成3)年には、その1年をもっとも象徴する言葉に贈る「年間大賞」が新設され(同年は「…じゃあ~りませんか」が受賞)、1994年からは新語と流行語に分けず、現行のトップテン形式に移行した。

 新語・流行語大賞は、受賞語とかかわりの深い人物・団体に贈られ、「パーソン・オブ・ザ・イヤー」という一面も持つ。それだけに授賞式には異色の顔ぶれがそろうこともしばしばだ。1997年には「マイブーム」のみうらじゅん(イラストレーター)と、「郵政三事業」の小泉純一郎(当時厚生大臣、のちの首相)が会場で同じテーブルになった。このとき小泉は、みうらの「じゅん」が、漢字では自分と同じ「純」だと知ると、「純純コンビだね!」と言ったとか。小泉はそのあとの壇上でのあいさつでも「私の“マイブーム”は郵政三事業です」と語っている(『現代用語の基礎知識2014年版 別冊付録』自由国民社)。

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昨年は「神ってる」が大賞を受賞。トップテンにはほかに「ゲス不倫」「聖地巡礼」「トランプ現象」「PPAP」「保育園落ちた日本死ね」「(僕の)アモーレ」「ポケモンGO」「マイナス金利」「盛り土」がノミネートされた ©杉山秀樹/文藝春秋

 ただ、受賞語やノミネート語には、誰に贈るかを優先したせいか、ときおり「?」と思うものもある。筆者としては、もうちょっと言葉そのものの意義も念頭に置いて選んでほしいと注文したい。たとえば、今年のノミネート語には、将棋関連で「ひふみん」と「藤井フィーバー」があがった。前者はたしかに元棋士の加藤一二三のニックネームとして定着したが、後者は単に現象を指した言葉で新味はない。将棋界から選ぶならむしろ「ひふみんアイ」がよかったのではないか。これは加藤の得意技の名で、対局中に相手側に回りこみ、盤面を確認するというもの。今年、藤井聡太がこの技を公式戦29連勝の新記録を達成した対局でやってみせ、話題となった。当の加藤はこれを受けて、「聡太、『ひふみんアイ』を継承してくれてありがとう」とツイッターに投稿している。もし、加藤・藤井に賞を贈るのであれば、両者のつながりを示すという意味でも、この言葉こそふさわしかったように思うのだが……。と、こうして賞をサカナにああだこうだ言うのも、年末の風物詩となって久しい。はたして今年の大賞には、下馬評の高いらしい「忖度」か、あるいは「インスタ映え」か、それとも別の言葉が選ばれるのか? 気になるところである。