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《猟銃立てこもり》「老々介護の末、母親(92)の治療方針で不信感」地元で評判の医師を殺害した男(66)が発していた“事件の予兆”とは

《猟銃立てこもり》「老々介護の末、母親(92)の治療方針で不信感」地元で評判の医師を殺害した男(66)が発していた“事件の予兆”とは

genre : ニュース, 社会

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 鈴木さんは、2003年に東京慈恵医科大学を卒業し、呼吸器内科を専門としていた。コロナ禍の最近では「他の患者にうつすわけにはいかないから」と一般診療を終えた後、夜遅くにコロナの発症患者の治療に駆け回る日々を送っていたようだ。多くの担当患者を抱え、奔走していた。

信頼が厚かった被害医師「ちょっとぽっちゃり。明るい先生」

 実際に、鈴木さんに父の最期を看取ってもらったという50代女性は鈴木さんの人柄をこう振り返る。

亡くなった鈴木医師(みずほ台病院ウェブサイトより)

「ちょっとぽっちゃりしていてね。上から目線じゃない、本当に明るい先生でしたよ。父は亡くなるまで2年間、先生のお世話になったのですが、『お父さん元気―?』と大きな声を出しながら白衣で自宅にやってくるんです。父以外にも『夫が無呼吸症候群のようなんです』というと『無料で診るよ』と即答するような、気前の良い先生でした。私が介護に疲れて『仕事を辞めようかな』と愚痴をこぼした時も、『辞めない方がいい』と親身に相談にのってもらいましたね」

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 患者が急変したときも、そして最期のときも、鈴木さんは患者や家族に寄り添った。

渡辺容疑者が利用していた、鈴木医師が勤務したふじみ野在宅クリニックが入っていたビル ©文藝春秋 写真/宮崎慎之輔

「父がショートステイ先で熱を出した時も、私がパニックになるなか、すぐに駆け付け、入院先の病院や救急車の手配をしてくれました。その夜、『今回は厳しいかもしれない』としっかり向き合って話してくれたのを覚えています。父が亡くなった時も仕事を終えてから病室に来てくれて、『よく頑張ったね』とハグをしてくれました。

 私も父が亡くなった後は、先生に持病を診てもらっていました。最後に会ったのは昨年末で、2月にも診てもらう予定でした。甘いものが好きなので、今後行く時はお菓子を持っていこうと思っていたのですが、突然叶わぬ夢となってしまいました」(同前)

 24時間対応で患者と向き合い、地元に愛された医師の突然の死。渡辺容疑者との間に、何があったのか。真相の解明が待たれる。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

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