「もしも、私が洋服を着ているときにスカートがめくれていても、いきなり触らないはず。どう考えてもおかしいし、コロナ禍で知らない人に触られるのは怖いですよね。
親切心だとしても、何の断りもなく触るのは失礼だと思います。あの女性が、まず『帯がめくれ上がっているから、直していい?』と、ひと言かけてくれたら、私も”着物警察だ”なんて思いませんでした」
ほかの着物愛好家からは「突然袖をつかまれて『どこの着物?』と訊かれた」という経験談も寄せられた。どんな服装をしていても、突然触るのはやめてほしい、と香山さんは話す。
コソコソ声で嫌味を言われる
また、香山さんのように、自分らしくアレンジをした着物を着ていると、着こなしに対して嫌味を言われるケースもあるという。
「直接は話しかけて来ないのですが『何? あの着方』とか『スニーカーやブーツに着物を合わせるなんてヘン』とか、私に聞こえるように嫌味を言ってくる人は、とても多いですね。見たくないなら、視界に入れないでくれ~って感じ。
また、鏡に写した自分をスマホで写真に撮って、SNSに上げるときも要注意。襟合わせを正しい『右前』にして着ていても、鏡上は像が反転してしまうので、タブーな着方の『左前』の像が写真に写っているんです。そのまま写真をSNSにアップすると、着物警察から『左前になっているから右前に直せ』というリプライがつくこともあります」
そのほか、着物警察ではないが、見知らぬ人に「なんで着物を着ようと思ったんですか? 動きづらくないですか?」と、しつこく質問されたという人も。香山さんは「洋服を着ている人には、絶対そんなこと訊かないですよね」と、ため息をつく。
「私が遭遇した女性もそうでしたが、ネット記事によれば着物警察は50代、60代の女性が多いようです。母から聞いた話では、その世代の女性たちが20代だった頃、着物の着付け教室に通うのが流行っていたらしいんです。なかでも『教室で学んだ着方が絶対に正しい』と思っている人が、着物警察になりがちだとか。
また、私に嫌味を言ってきたり、断りもなく直したりしてくる人は、着物ではなく洋服を着ているという共通点がありました。もしかしたら、着物を特別視しすぎて“普段着”と思っていない人が、着物警察になっているのかもしれません」