「がん」を「ガン」と書いていたら警戒
上松医師によると、これ以外にもサギ医療の共通点はいくつかあるという。たとえば「がん」を「ガン」とカタカナで書くケース。
「悪徳医師が患者を呼び込むために出版するいわゆる“バイブル本”やパンフレットでは、『がん』ではなく『ガン』とカタカナ表記することが非常に多いのです。平仮名だと文章の中に溶け込んで目立たないけれど、カタカナにすることで浮き上がり、ショッキングな印象を与えられるのです。これはインチキ医療を見分けるうえで役に立ちます」
上皮組織にできる悪性腫瘍(固形がん)を「癌」と書き、白血病や肉腫を含む場合は「がん」と書く――という表記ルールもあるにはあるが、新聞や雑誌では「がん」とひらがなで書くのが基本だし、学術的な組織の名称もひらがなか漢字だ。中にはそうした表記に気を遣わない医師もいるので絶対ではないものの、「ガン」というカタカナ表記を見たら、ちょっと警戒してもよさそうだ。
エピソードで騙す――という古い手はいまもある。これは“水系”のインチキに多い。
「『昔どこぞの国の皇帝が飲んでいた』とか、『アマゾンの奥地に湧き出る奇跡の水』などと、検証しようのないエピソードを語ってくるのは間違いなくインチキ。絶対に手を出してはいけません」
たしかにそうだ。もしそれが本当にアマゾンの奥地の湧水だったとして、世界一の長寿国に住む日本人が、高いお金を支払って飲む必要はない。逆に日本の水道水を送ってあげたほうが喜ばれるはずだ。
『△△式』と医者の名前がついていたらインチキ
もう一つ、上松医師がインチキ医療を見分けるポイントとして、「“免疫力”の多用」を挙げる。
「『免疫力が上がる』というと『免疫細胞が活性化する』と思っている人は多いけれど、実際に免疫細胞がやたらと活性化したら、自分自身の細胞も攻撃されるし、感染症にかかりやすくなってしまいます。医学的に『免疫力を高めること』は色々と難しいことが絡み合うので、簡単に口にすることができない領域なのです。
それを『これを飲めば免疫力が上がる!』などと簡単に、繰り返し言ったり書いたりするのは、ハッキリ言ってまともな医者のすることではない。そこに『△△式』と医者の名前でも付いていたら、間違いなくインチキです」
死を恐れ、藁にも縋る思いの患者を、人の命を守るべき立場の“医師”が騙す――というやるかたない構図に、ついに“正義のメス”が入った。