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《「医師」の肩書を信じないで》悪徳医師が生まれる“哀れなメカニズム”と末期がん患者が「命を落とした時の言い訳」とは

2022/02/17

 がんなどの深刻な病気の患者の悩みに付け込み、科学的根拠のない詐欺医療を行い、高額な“医療費”を騙し取る悪徳医師。

 しかし、悪徳とはいえ「医師」である。彼らは大学の医学部を卒業し、医師国家試験に合格している。そこに至る道のりは決してラクではなかったはずなのに、なぜ道を踏み外してしまったのだろう。

 詐欺医療の実態を解明し、医学的根拠に基づく解説をすることで被害者をなくし、詐欺医療の根絶を目指す「詐欺医療から人々を守るプロジェクト(略称=サギプロ)」を設立した上松正和医師(東京大学医学部附属病院放射線科助教)に話を聞いた。

上松医師が“詐欺クリニック”へ潜入した際の動画。上松医師は「乳がんの母親を持つ息子」のフリをして訪れた(「YouTubeクリニック」より)

悪徳医師が生まれるメカニズムとは

 そもそも悪徳医師が生まれる背景には何があるのか。

「ひと口に“医師”と言っても、その中には優秀な医師と、そうでない医師がいる。医師国家試験合格後も勉強や研鑽を続けられない医師は、まともな医療を提供し続けることができません。ただ、提供する医療のレベルが低くても、“医師”という資格を利用すれば簡単に金儲けができることに医師人生の途中で気付くのです」(上松医師、以下同)

 ドロップアウトしそうな医師を探して取り込もうとする“悪徳業者”も存在する。効果のないサプリメントや水などのインチキ商品を消費者を騙して売りつけるには、「医師」という資格は抜群の効果を持つ。最も簡単なのは、クリニックを開設し、医師の資格を持つ者を雇い、診療の一環として商品を売りつける方法だ。

上松医師

「インチキ商品を売りたい業者は、話に乗ってきそうな医者をつねに探しています。僕のところにも求人メールが来ますよ。『短い労働時間で年収は数千万円!』とか(笑)。しかも詐欺医療であることはとりあえず隠して、『新しい免疫治療』なんて書いてある。まともな医者が読めばすぐにインチキと判るのですが、意外に簡単に魂を売って、詐欺医療に流れてしまう医者もいるんです」

 上松医師によると、悪徳医師にも大きく分けて2つのタイプがあるという。「金儲け」という目的をもって患者を騙す医者と、本気でその詐欺治療が効く、と信じ込んでいるタイプだ。

「統計はないので肌感覚ですが、はじめのうちは前者、つまり金儲けのために患者を騙している医師が多数でしょう。ただ、嘘を言い続ける自分や、他の医師から批判される自分を直視できず、自らの嘘を信じ込んでいく医師がいるようです。そんな医師にとっては医療の効果の検証など求めていないので何を言っても通じない」