医師の「保険が利かない」発言にはご用心
そう言えば、かつてオウム真理教(当時)がクリニックを持ち、一般診療を行っていたことがある。しかし「診療」とは名ばかりで、実際には医師の資格を持つ信者が、診療の名のもとに洗脳をしていただけのこと。
医師が信仰や信念を持つのは自由だが、科学者であるはずの彼らが、自身の信仰や信念を押し付ける道具として医療を利用し始めると、事はとても厄介になってくる。上松医師の「何を言っても通じない」という言葉がよく理解できる。
当然のことながら、詐欺医療に健康保険は利かない。全額が自由診療、つまり自己負担となる。医療費は医者の「言い値」なので高額だ。
そんな時、悪徳医師は「保険が利かない」という点を逆手にとった商売をするという。
「『まだ国も知らない新しい治療』とか、『自由診療だから国の規制を受けなくていい』『一人ひとりの患者さんに合わせたベストな治療が可能』などのセールストークがよく使われます。でも実際には、保険診療でもかなり自由に治療を組み合わせて“ベストな治療”ができるのですが……」
患者側はリテラシーを上げて自衛
こうしたフレーズに騙されないためには、患者側もリテラシーを上げて自衛する必要があるだろう。
「まず、前提として、自由診療が必ずしも詐欺医療ではありません。保険診療になるにはある程度の規模を対象とした治験で得られた科学的根拠(エビデンス)が必要なので、重粒子線治療など一部の症例には効果がありそうでも、症例数が少ないため保険で認められないケースはあります。ただ、乳がんや前立腺がんなど患者数の多い病気で、自由診療が効果を示すケースは極めて少ないのが実情です。
信頼できる順に並べると『自由診療<<<保険診療<標準治療』といった感じです。新たに開発された治療法に一定の効果が認められれば保険診療にはなりますが、それが標準治療になるには、既存の治療と比べて有効性が優れていることを証明するための比較試験をクリアしなければならない」
そうした審査を経て行われる標準治療と、「国も知らない治療」のどちらに大切な命を預けるべきか――。たしかに患者の側に理解力が求められるところだ。