『助けてあげたかった』という方の思いはすごくありがたい
「SNSで悩みを打ち明けていた爽彩ですが、恐怖に怯えてどれだけ傷つき、苦しんでいたか。みなさんが注目されたのは、未成年の子供たちが携帯やSNSを使って画像を拡散するなど、現代を象徴するようなイジメになってしまったからかもしれません。爽彩が失踪後に凍った状態で発見されたことで、いろんな方に『お母さんは何で自殺にしたいんですか?』『殺人だと思っていますか?』と、聞かれることが多いのですが、私にはわかりません。爽彩はネットの友達にSNSで自殺を仄めかして出ていったということは事実なので、自殺の可能性が高いっていう警察の判断は間違ってはいないと思うんです。首を絞められたり、拘束された痕はなかったので、明らかな事件性はなかったということだと思います。
私が母親としてというよりは一人の人間として考えた時に、爽彩のことをきっかけにイジメ問題に関心を持ち、『助けてあげたかった』という多くの方の思いはすごくありがたいです。私は爽彩が子供の頃からずっと虐待児を救いたいということを目標に仕事をしていた。たくさんの人が興味を持つことが、虐待やイジメなどから子供たちを救うきっかけになると思います」
「セカンドレイプだったかも…」名前を公表したことに今でも葛藤
加熱する報道の一方で母親に対して「虐待母だから死ね」「人殺し」などとメールが届くなど、ネット上にも事実無根の誹謗中傷が広まった。何者かによって真夜中に玄関のノブが動かされたり、窓ガラスにへばりついて室内を覗かれるなどのイタズラや脅迫電話も続いた。一部マスコミからの心無い質問に「精神的に持たない」と追い込まれた時もあったと振り返る。
「『どんなふうに凍っていたか?』『どんな形で体が曲がっていたか?』『娘さんが亡くなってどんな気持ちですか? 悲しいですか? 辛いですか?』など、思い返すのも辛い質問ばかりでした。私は一般の会社で働いているのですが、『働いている姿を撮らせてほしい』というお願いもありましたが、私が顔を出すことでいろんな方に迷惑をかけたり、取引先にも迷惑をかけたりするということを何度も説明してきました。中には『取材を受けてよかったと思わせます』と話すメディアの方もいましたが、私の中では娘の名前を公表したことに今でもずっと葛藤があります。
報道によって多くの方が注目してくれたから、第三者委員会が立ち上がって、事態が進んだという部分では、本当に良かったのかなとは思うんです。でも、私が娘の性被害についてセカンドレイプのようなことをしたのは間違いないので、やはりそこは世界で一番悪い母親なんじゃないかと、思い悩んでしまうことが増えています。マスコミに扱われたからよかったとか、きっとそういう思いの遺族はいないと思います」