オミクロン株による世界的な感染再拡大や、人権状況を問題視する各国からの外交ボイコットという逆境をものともせず、北京冬季五輪は予定通りに開幕した。

北京五輪の開会式会場となった“鳥の巣”スタジアム ©JMPA

 抜け穴だらけだった東京五輪のバブル方式とは比べるべくもない、外界と完全に遮断され、報道陣も排除した「クローズド・ループ」内で行われる今大会は、開催地の住民にとっても遠い世界のようだ。

 北京市在住の40代男性が話す。

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「北京五輪が開幕したという実感はまるでありません。2008年の北京五輪のように、開幕前から様々な関連イベントが行われたり、各国の選手団を街で見かけたり、テロ対策の武装警察の装甲車があちらこちらで走っていることもない。北京市では五輪開幕を前に、市外からの来訪者の陰性確認の徹底や各所での道路の通行止めなどをやっていますが、今は春節の連休中なのでそうした不便を嫌って、北京市外の住民はわざわざ市内に入って来ず、閑散としている。テレビで見る北京五輪は、仮想空間の出来事のようです」

好評だった開会式も仮想現実感が強かった? ©JMPA

 北京五輪では一般客への観戦チケット販売も行われておらず、開催地の住民といえども今回の五輪はテレビやネットで楽しむしかないようだ。

中国国内で圧倒的人気を誇る日本人選手とは…?

 そんななか、中国ネット民から異常な注目を集めている選手がいる。

 フィギュアスケートの羽生結弦選手だ。

 中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」に設けられたファンサイト「羽生結弦InfoStation」には、160万人を超えるフォロワーから、「3連覇に向けて頑張ってください」、「早く柚子(羽生の中国での愛称)の演技が見たい」などといった熱いラブコールが寄せられている。

中国で熱狂的な人気を誇る“柚子”こと羽生選手 ©JMPA

 2月3日、日本スケート連盟の公式ツイッターに羽生のメッセージ動画が公開されると、中国のSNSで一気に拡散。ウェイボーのホットワードランキングで一時、1位となった。

 そんな羽生選手の中国での人気の背景について、中国人ジャーナリストの周来友氏が話す。

「選手としての実績やルックスももちろん人気の理由ですが、彼の人気を一気に高めたのは2017年にヘルシンキで行われた世界選手権。入賞者の写真撮影で、優勝した羽生は3位の中国人選手が持つ中国国旗が裏返しになっていることに気づき、直したんです。その時の映像が中国のネット上で広がり、ファンを増やした」