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人脈の広さを武器に事業を拡大した中村容疑者

 中村容疑者は京都府京丹後市で生まれ育った。10代後半から建設業に関わり、軽天(軽量天井)職人として汗を流していたという。その頃から裏では闇金業に携わるなど、それなりの“ワル”だったようだ。

 2001年、中村容疑者は軽天工事を行う会社を起ち上げ、独立する。直近の年商は10億円強。自分名義の家は全国に3つあり、高級車も複数所持していた。

事件のあった沼津の街は漁業でも有名 ©文藝春秋

 本社のある京都のほか、東京、大阪、尼崎、福岡、沖縄など全国に事務所を置き、政財界にパイプを作りながら全国の土木工事などを請け負い、事業を拡大していった。中村容疑者と関わりのあった別の知人が言う。

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「今回の事件の被害者である桂子さんと出会う少し前に、尼崎で有名暴力団の元組長と同居していたのは有名な話です。事件前の2021年には、東京の某ITベンチャー社長や有名YouTuberと会っていたなど、とにかく顔が広い。

 今どき政界とコネがあるからといって建設業の入札が決まるわけでもないのですが、中村はよく『〇〇議員の秘書を紹介してくれ』と頼み込んできました。公務員は警戒心が強いので、議員を自分の味方につけて公共事業などの受注に“圧”をかけようとしたんです。実際、党派を問わず国会議員や議員秘書、右翼団体や自治体幹部などと交流はありました。食事をしたり、ゴルフに行ったりしていましたね。

 実は、中村容疑者は桂子さんへのDVで過去に逮捕されています。ただ、“傷”はそれぐらい。暴力団に入ったことはないし、刑務所にも行ったことがありません。ヤクザまがいの人間にも顔が利くので、政界と反社会勢力との間に噛ませやすいという利用価値があるんです。そういった人脈を武器にして、九州の自然災害の復旧工事や太陽光発電のための森林伐採、IRのための敷地整備などを請け負っていました。重機の売買で知り合い、東証1部上場企業の前会長とも長い付き合いでした」

事件現場となったラブホテル ©文藝春秋

順風満帆のはずが…狂い始めた「歯車」

 順風満帆に見えた中村容疑者の歯車が狂ったきっかけの1つが、2020年に福岡県の建設会社の着手金詐欺で1000万円の損失を出したことだった。

 その後も佐賀県の溜池工事や、福岡県の砂防ダムなど、請け負った工事で立て続けに損失を出してしまう。加えて、重機の購入代金や事務所費用も膨らんだ。結果的に、九州の事業だけで合計4000万円もの損失を被ることになった。