契約無効訴訟と中国での「独立」
まず、「クリス」(ウー・イーファン)は、デビュー以来初のEXO単独コンサートを控えた2014年5月、専属契約の無効訴訟を起こして中国で芸能事務所を設立し、イベント参加や映画の主演などを行った。最終的にEXOは2014年5月下旬にクリスを除いて何とかコンサートを開くことができた。
しかし、クリスが脱退すると、別の中国人メンバー2人もSMエンターテインメントを離れて中国に戻った。EXOに残った中国人メンバーのレイも、2017年以降、「中国で個人活動をしたい」という理由からEXOの韓国スケジュールにはほとんど参加しなくなった。
その後、中国人メンバーは韓国で磨き上げた歌やダンス、演技力を自国で遺憾なく発揮。大きな人気と収益を独占した。一方で、彼らが脱退したEXOは中華圏での活動が減少。そこにメンバーの入隊も重なったEXOは、人気低迷に歯止めがかからなくなってしまったのだ。
自国の政府や世論を意識する行動を取る中国人メンバー
中国系メンバーの「帰国」問題は、EXOに限られた話ではない。実際、SUPER JUNIORのメンバーだった韓庚(ハン・ギョン)も2009年に契約を破棄して中国に帰国する憂き目に遭っている。SMエンターテインメントは5年後にデジャブを体験した格好だ。
また、今年に入ってからも、デビュー3年目のガールズグループ、エバーグロー(EVERGLOW)の中国人メンバーが韓国の芸能ニュースを賑わせた。
1月2日に行われた新年のファンサイン会で、他のメンバーらが、目上の人などに丁寧にひざまずいてお辞儀をする韓国の伝統に従ってステージ上から挨拶したのに対し、中国人メンバーのイロンはお辞儀をせず、立ったまま片手で拳を抱える中国式の挨拶を行った。
韓国のファンやメディアは当初、そうしたイロンの行動を問題視することはなかった。しかし、中国の微博(ウェイボー)でその挨拶動画がシェアされると、「中国人はひざまずかない」というハッシュタグとともに、中国国内からイロンを称える投稿が数多く掲載され、中国官営メディアも彼女を肯定的に評価しはじめた。
そこから騒動はさらに拡大。微博では過去に韓国で活動をしていた中国人芸能人に対して「◯◯は韓国人にひざまずいていた」といった投稿が掲載され、さらには「韓国は中国の属国だった」などというコメントが数万件の「いいね」を得る事態になった。
こうした中国側の反応を受けて、韓国でも否定的な世論が起こった。すると、1月9日にイロンは「学業上の理由」で、突然中国に一時帰国することを発表したのだ。
韓国芸能界の中国人メンバーは、このような「帰国」問題や、最近では香港の中国送還法改正反対デモを否定して「一つの中国」を支持するなど、自国の政府や世論を意識する行動を取ることも増えてきている。