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「キスシーンはギリギリOKかどうか」「iPhoneを登場人物が使ってはダメ」「連続殺人事件はNG」 中国映画界の細かすぎる“検閲のリアル”

「マーベル映画は中国国内でも大ヒットが約束された大型コンテンツです。『シャン・チー』は中国人ヒーローが初の主人公ということで、中国でも楽しみにしているファンが多かったはずです。公開されれば大ヒットしていたと思うのですが…」

 肩を落として語るのは中国人映画プロデューサーのAさんだ。

 マーベル・スタジオが制作した『シャン・チー/テン・リングスの伝説』は9月3日に全米公開され、週末の興行収入は初登場で1位を獲得。その後も、4週連続で興行収入ランキング1位を守り続けた。『アイアンマン』や『キャプテン・アメリカ』などの大ヒット作がある一連のマーベル・シネマティック・ユニバース作品の一角を担い、全世界興行収入は490億円にものぼる大ヒット作だ。

中国で上映を禁止されたマーベル・スタジオ制作の『シャン・チー/テン・リングスの伝説』 公式HPより

 当然、主人公の故郷である中国でも大ヒットが約束されているはずだった。

 しかし、中国当局は「作中の中国の描き方に侮辱的な部分がある」として国内での上映を禁止。現在に至っても中国国内で同作を視聴することはできない。

中国当局の判断は「予測不可能」

「制作側が大丈夫だろうと思っている表現でも、当局の受け止め方が違うことは往々にしてあります。中国が良いイメージで描かれているのか、悪いイメージで描かれているのか、当局の判断はふたを開けてみないとわかりません」(同前)

 中国の映画市場は1年間で約1兆円といわれ、北米市場と肩をならべるほど大きい。巨大マーケットゆえに中国への販売をめざすコンテンツホルダーは少なくない。しかし、先述のような規制の厳しさから中国での公開を許可される作品は少ないという現状がある。

中国の習近平国家主席 ©︎AFLO

 ただ、こういった海外作品への規制は「まだまだ緩い」とAさんは語る。

「検閲されるのは、輸入される作品だけではありません。中国国内で制作されるドラマ、映画は更に厳しく検閲されるんです」

 Aさんは20年近く映画やドラマのプロデューサーとして作品作りに携わってきたベテランだ。Aさんの口からは更に厳しい中国国内で課されている規制の実情が次々と飛び出してきた。