現在中国で公開されている映画は『007』と『おくりびと』
試しに現在中国で公開されている海外映画をAさんがネットを使って調べてみると、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』と『おくりびと』の2作品しかヒットしなかった(取材時)。
巨大マーケットである中国市場に海外映画が参入するのは今後さらに難しくなるのだろうか。Aさんは「むしろ日本映画にとってはチャンスではないか」と語る。
「例えば『万引き家族』のような生活の切実さを描いた作品は、中国国民もこういった生活がリアルであることを知っていますし、人気になると思います。文化的な作品の輸入本数が少ない今は、海賊版が流通してしまっていますが、正規版が公開されれば見に行く人は一定数いるはずです。中国は人口が多いので、たとえ国民の1%しか観なくても数字としてはとても大きい」
海外映画なら貧困を描いてもOK?
しかし、『万引き家族』のテーマでもある「貧困」は社会主義国である中国では絶対的なタブーとされているはずだ。「当局から規制されるのではないか?」と危惧を口にすると、Aさんは「そこが奇妙な所なんです」と笑う。
「たしかに、『万引き家族』を中国映画としてリメイクすると『社会主義国でこんな貧困家庭があるわけがない』という理屈で絶対NGです。でも、海外映画として公開するなら『我々社会主義国ではない日本社会を描いている作品だから』という理由でOKなんです。『ほら、社会主義国ではない国はこんな状況なんだよ。だから祖国がいいでしょ』という理屈ですね」
厳しい規制が課せられている中国映画業界。いまはその間隙を縫ってどう成功を収めるかが「プロデューサーの腕の見せ所」なのだという。その隙間に日本映画が求められているのならば、積極的に進出していきたいところだ。海賊版に観客を「万引き」されてしまう前に。