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母親もうれしくて号泣…ロッテ・佐々木朗希 人々の心を動かす“言葉力”

文春野球コラム ウィンターリーグ2022

2022/02/14
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「自分が頭に描いていることを言語化できる人間になりたい」

 この登板では色々な事も経験した。プロ初打席。2度の打席はいずれも三振に倒れた。逆にプロで初めて投手と対戦した。少し戸惑いがあったのか相手先発投手のアルカンタラには適時打を打たれた。プロ初の申告敬遠も経験した。5回に佐藤輝明内野手を申告敬遠。5回を投げてMAX154キロ。94球、被安打7、5奪三振、4失点(自責は3)。初めての甲子園のマウンドは「ブルペンの方が高くて、ちょっと本番は低くてどうかなあと思ったけど、投げやすかったです。すごく集中できた」と佐々木朗。甲子園の独特の雰囲気、応援も「気にならなかった。逆にボクを応援してくれているような気分になった」と笑った。そして最後の瞬間はベンチ最前列で見守った。勝利の瞬間、先輩たちから祝福を受けた。なんともいえない嬉しさがこみあげてきた。

「色々な事があって、色々な想いがあるけど、こうやって勝つことができて本当によかったなあと思います。甲子園で勝つことが出来て良かった」と佐々木朗は試合後、メディアが待つ取材会場に向かう廊下を歩きながらポツリとつぶやいた。

  それでも投球内容を振り返る時には「自分の納得いく球を投げることが出来なかった。自分に対して甘く見たとしても、数球あるかないか」と笑顔は消え、少し厳しい表情となった。若くして自分を俯瞰して見ることが出来、自分を律する強さがある。

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佐々木朗と井口監督 ©千葉ロッテマリーンズ

 目標を聞かれると「40歳まで現役」と語る若者にとって聖地甲子園でのプロ初勝利はあくまでスタートに過ぎない。そしてこれから先、いいこともあれば当然、壁もある。それもすべて熟知している佐々木朗は「プロに入ってなにが成長したかと言われたらわからないです。ただ精神面は強くなったと思います。何事も楽しいと思わないとダメですよね。辛いことはもちろんあるけど、どんな時も楽しまないとダメだと思うようにしています」と前を見据える。多くの人の記憶に残る言葉を残した甲子園でのヒーローインタビュー。これからも沢山の言葉を放つことになるだろう。もちろん、佐々木朗自身もプロ野球選手として言葉で人に想いを伝える大事さをしっかりと理解している。

「暗黙知と形式知ですよね。自分が頭に描いていることを言語化できる人間になりたいですし、それが憧れです。まだまだぜんぜん自分の思っていることを言葉に出来ていない。それがもどかしいし、そういう存在になりたいという思いはあります」と佐々木朗。

 今年もプロ野球が始まる。そして様々な言葉が生まれる。プロ3年目を迎える佐々木朗に井口監督は「いい形でキャンプに入ってくれた。オフの期間も一日も欠かさず野球の事を考えて過ごしてくれた。開幕から年間を通してローテーションで投げて欲しいというのはもちろん。もうローテ入りが目標という次元ではない。どれだけ勝つか」と高い期待をかける。

 常勝軍団元年。「頂点を、つかむ。」というスローガンの下、リーグ優勝にまい進する千葉ロッテマリーンズ。その中心には背番号「17」がいる。これから彼の口からどのような言葉が飛び出すか。今年もプロ野球の言葉で心動かされる日々が始まる。

梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)

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