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世界遺産の本来の目的は?

 信濃毎日新聞の社説は『佐渡島の金山 「歴史戦」を争うむなしさ』(2月2日)で、

《日韓の対立をあおるような一部保守派による発言は、新潟の人たちの長年の悲願達成にかえって水を差しかねない。》

《「登録実現」が首相の本心なら「歴史戦」と決め付ける加害性の否定と距離を置くべきだ。》

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 ユネスコの審査は関係国の対話を重視するので、折り合わなければ無期延期もあり得るという。これでは本末転倒です。

佐渡金山 ©iStock.com

 毎日新聞は『世界遺産は「歴史戦」の戦場なのか 日韓が対立する佐渡金山』(2月5日)で専門家のコメントを載せた。ユネスコの諮問機関「イコモス」で副会長を務めた国学院大教授の西村幸夫氏。

「普遍的価値を認め合うために科学的な議論をしなければならないのに、歴史戦という言葉には違和感を覚えます。世界遺産は互いの歴史認識を戦わせる場ではありません」

 韓国の反発についても「江戸時代に対象時期を限定しており、戦時中とはあまりに時代が離れているので、そこにクレームがつくのはいくら何でも不自然です」。

「文化多様性を認めて相互理解を図ることが平和につながる、というのが世界遺産条約の根底にあります。政治的な問題とは切り離して文化財の価値を議論すべきです。そのために世界遺産もあるわけなんです」

 世界遺産の選定は「歴史戦」の戦場ではないとピシャリ。こうなると気になるのは“むなしさ”とまで書かれた「歴史戦」という言葉です。

NHKも前のめりで解説

 今までは「保守派や一部メディアで『歴史戦』という言葉が叫ばれている」(毎日新聞2月5日)というイメージだった。しかしNHKは1月27日のニュース番組「シブ5時」で「歴史戦」について前のめりで解説していたという。NHKも“一部メディア”になったのかとしみじみ。

 もっとも、解説したのは安倍元首相番でおなじみ岩田明子記者ということで背景も見える。「河瀬直美が見つめた東京五輪」ならぬ「岩田明子が見つめた安倍晋三」という感じでしょうか。どちらも再放送希望です。

 こうして考えると他にも進行中の「歴史戦」がある。アベノマスクだ。絶対に負けられない戦い感ありあり。