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「相続問題」の欠落

 だが、この安堵の裏側には、所有者たちの間にこれから頻発する相続の問題が抜け落ちている。都市農地の所有者の多くが高齢化しているのだ。そして彼らの子供たちの多くは、親の職業を継ぐ意思はなく、親の農地を相続して、それを宅地として維持できるような経済力も持ち合わせてはいない。

 したがって現在の所有者にアンケートをとったところで、これまで農業を続けてきた高齢者が、いきなり22年で農業をやめるとは言い出しにくい。結果は自身が農業を継続できる間、そして相続が発生するまでの間、とりあえず、特定生産緑地に登録をしておく、というごく当たり前のアンケート結果になるのである。これではまるで模範解答に導くための誘導尋問を行っているようなものだ。

 生産緑地制度が改正された92年には1万5109haが登録されていた都市農地も、2019年までの間に約2割にあたる2900haが減少している。これらの多くが相続等の発生によって生産緑地を継続せずに宅地化の道を選んだものと想定される。

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都市計画の未来に適合していない「生産緑地制度」

 国では、生産緑地への登録要件を緩和して、農業法人への貸付や農作物の直売所などに提供している土地についても登録を可能にするなど制度の維持に腐心しているが、都市農地の未来は明るくない。

©️iStock.com

 事業承継がままならない多くの都市農地の高齢所有者から順次相続が発生するたびに、ポロポロと宅地化された土地がマーケットに供給されることはおそらく避けられないことだからだ。またそうした土地の上に、需要が見込みがたいアパート建設などが横行する可能性も懸念される。

 都市農地を守ることは大切なことである。だが、これまでの都市計画はひたすら人口が増加していくことが前提のモデル構築が行われてきた。その結果として市街化区域が広大に設定され、その中に多くの都市農地が組み込まれてきてしまったのが実態である。大都市郊外部の土地の未来は、これまでの方程式では持続可能性が期待できない。つまり発想の仕方として、従来は宅地であるから宅地並みに課税すべきところを、特別に農地として税金を減免してやる、という考えがそもそもこれからの未来に適合しないのだ。