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「切ると刺すでは違うのだ。本当に殺したければ刺すのが一番だ」怒羅権初代総長が語る中国人犯罪グループの“省民性”

「怒羅権 初代」より#3

2022/02/21

 しかし、上海人にとって福建省グループは、常に緊張を強いられるビジネスパートナーだった。いつ自分たちに反旗を翻すかわからない。報酬をめぐってトラブルがあれば、命を取りに来ることもある。考えあぐねた結果、上海人は私に協力を求めてきた。上海人は武力ではなく、いわゆる頭脳派組織。私たちは上海人を「喧嘩ができない」と馬鹿にしていたが、その上海人の強みは情報力とシノギのシステムを構築するテクニックだった。

「あそこにどのくらいのお金がある」「深夜は警備が手薄になる」など、とくに同胞人の金持ち情報には如才がない。こんな情報だけなら、それこそ日本に地場を持つ暴走族・怒羅権出身者のほうが長けていたが、上海人の強みはシノギのシステムを構築するテクニックだった。たとえばパチンコのパッキーカードやクレジットカードのスキミング。偽物をつくれたらいいな、とか、カード情報を盗めたらいいな、なんてアイデアは馬鹿な犯罪者でも簡単に考えつく。が、それを実行するためのスキームがないことがほとんどだ。それを上海人はいとも簡単に用意してしまうのだ。

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武力なしで稼ぎ続けることは不可能

 私の下には、そんな頭脳やアイデアに優れた上海人も、暴力性に優れた福建人も、そして暴走族を経験して日本の事情に明るい残留孤児も集まるようになった。しかし、上海人が日本の裏業界で稼ぐことができたのは短期間だったはずだ。とどのつまり、裏業界では暴力性、武力は切り離せないのだ。そのバックボーンがない者がいくら利口に立ち回ったつもりでいても、最後はめくられてしまうのが常だった。

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 アイデアの具現化も、最初は重宝されるであろう。が、一度できあがってしまえば、簡単に真似されてしまうし、何より分配権利を踏み倒されてしまう。金持ち喧嘩せず、というのは一見賢いようで、結局旨味がないまま撤退せざるを得ない。私が常に娑婆にいれば、両者の架け橋を永続させていくことも不可能ではなかったかもしれないが、再三刑務所のお世話になっていたため、それも不可能だった。

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