会見を決意、しかし両親は大反対
やはり、会見を開こう、と決心した。
同じ思いをする人を少しでも減らしたかった。こんな経験は誰にもして欲しくはない。これを「よくある話」で終わらせてはいけない。
A氏は私に、「この事件の教訓は、次の事件に生かします」と言った。「次の事件」と考えた時に、大好きな人々の顔が浮かんだ。彼らがこんな目に遭ったら、と考えるだけでゾッとした。今、この瞬間にも苦しんでいる人がいる。そう考えたら、このシステムを変えようと今動かなければ、一生後悔することもわかっていた。
一方で、自分の傷を他人に晒すことは怖かった。少し閉じかけていた傷口が、また大きく開いてしまうのではないか。会見を開くことは、世間にわざわざ自分の傷を晒し、知らない人からその傷口に塩を塗られるような経験だ。
2年間どうするべきかと一緒に考え、支えてくれた友人たちは、この決断を応援してくれた。家族にもきちんと伝えるため、ある晩、席を設けた。両親にはすでに何度も辛い思いをさせており、これ以上、彼らに迷惑をかけるのは、本当に心苦しかった。
前回、刑法改正を訴える性被害者の共同会見に実名で出席したい、と話した時には、両親は最初は反対し、心配しながらも、最終的に了承してくれた。
しかし、今度は大反対だった。何よりも、今まで事件の内容を詳細に私の口から語ることはなかったが、今回初めて週刊誌を読み、私の身にあの夜、何が起こったかを知り、相当辛かったのだろう。母は、
「記事が世の中に出た以上、あなたの身に何が起こったか、人は知ることになるんだよ。絶対に会見はしないでほしい。今だって危険を感じてKちゃんのところにお世話になっているのに、これ以上自分を晒してどうするの? カメラが突然うちにきたらどうすればいいの?」
と言った。顔と名前を出して会見するというのだから、無理もない。実際に、家族に危害が加えられるような事態が起きたらどうしようか、とは真剣に悩んだ。父は私に、
「社会と戦ったりするより、人間として幸せになってほしい。娘には一人の女性として、平穏に結婚して幸せな家庭を築いてほしいというのが親の願いなんだよ」
と言った。親として当然の願いだった。