――一世一代の試合の前に、たとえば交際相手と喧嘩とか、プライベートで心が乱されるようなことがあったらそれもたまらないですね。
村主 私の場合ですが、現役時代は五輪の時期に限らず、恋愛する気はまったく起きなかったですね。だけど女子フィギュアはメディアからの注目度も高かったので、「自由時間でもオリンピック村から出ないように」というお達しがありました。
――週刊誌対策ということですね。
村主 緊張で悪夢にうなされているような状況で余裕など微塵もなかったので、なんの問題もなかったですけどね(笑)。
長く現役を続けたからこそ分かる「ああ、こういうパターンだな」
――村主さんは33歳まで現役を続けました。女子スケート選手としては異例の長さと言われていますが、長い選手生活の良かった点、難しかった点はどんなどころでしょう。
村主 トリノ五輪の後はまったく結果を残せなかったのでアスリートとしては良くなかったと思います。ヘモグロビン値が落ちて貧血の回数もどんどん増えて……と、体的にもすごく大変でしたね。同じ練習はこなせても、もう回復力が同じではないので、感覚やデータとどんどん合わなくなってくるんです。
ただ、引退後に教える立場になったことで、苦しかった経験が「ああ、こういうパターンだな」と、全部“引き出し”になって後々役立っているなと感じていて。
特に私は長い競技生活の中で経済的に苦しんだ経験があるので、親御さんに資金面のこともちゃんと説明するようにしています。
――具体的にはどんなアドバイスを?
村主 たとえば今みたいに冬季五輪があるとスケート熱が高まって、はじめにとんでもなく投資されるんです。そういうときには、「最低でも5年間は、コンスタントに練習に通えて、大会にも出られるよう、資金計画をしてください」とお伝えします。
――結果を急ぐばかりに最初バーっとお金をかけてしまって、本当に実力が伴ってきたときに資金がショートしてしまってはみんなが辛い思いをしますね。
村主 普通のご家庭は両親がオリンピック選手だったりはしないと思うんですね(笑)。だからこそ、フィギュアスケートで上位に入るためにはどれくらいの時間やお金が必要かをきちんと数字で示してあげたいと思っています。実際、「想像よりめちゃくちゃ大変だった!」と辞めていってしまう方もすごく多いので。