「氷上のアクトレス」と呼ばれ、2大会連続冬季オリンピックに出場したフィギュアスケーターの村主章枝さん。14年の引退後は拠点を海外に移し、フィギュアスケート振付師や映画プロデューサーとして活躍するなど、独自のセカンドキャリアが注目を集めている。

 そんな村主さんに、フィギュアスケート界で取り沙汰されている「選手生命の低年齢化」問題や、女性アスリートと生理の問題について聞いた。

(村主さん提供)

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採点方法の変化により「表現」より「ジャンプ」重視へ

――現役時代は「氷上のアクトレス」と呼ばれ、後に写真集も出版。現在はフィギュアスケート振付師や映画プロデューサーとしても活躍されているお姿を見ると、村主さんの骨子には常に「表現」があると感じます。

村主章枝さん(以降、村主) スポーツ選手としてセカンドキャリアに迷わなかったのはラッキーだったかもしれません。15歳の時に出会った振付師ローリー・ニコルさん(※)のおかげで、「将来はこの人みたいになりたい」という目標ができたんです。
※編集部注:ローリー・ニコル:ミシェル・クワンや浅田真央を育てたカナダの名振付師。

――現役時代からすでに振付師になることが目標だったんですね。

村主 もちろん当時はメダルを目指して頑張っていましたが、そこが主軸ではなかったというか、自分の場合はあくまで振付師になるための技術を磨く、というのが根底にありました。

©文藝春秋

――フィギュアスケートは芸術的な側面と競技的側面が融合したスポーツだと思いますが、今は「表現」より「ジャンプ」に注目が集まることが多い気がします。

村主 振付師の視点から言うと、今はプログラムの中で芸術的な演技を見せる時間がほとんど作れないんです。

 そこには採点方法が大きく関わっていて、4回転や3回転を1本跳んでしまうと、芸術点とは比べものにならないほどの高得点が稼げてしまうんですね。表彰台を目指す選手が高得点の技に挑戦するのは当然ですが、スピンひとつ回るのに15~20秒、ステップひとつに40秒近くかかり、それを積み重ねていくと、本当に演技の時間が限られてしまうというのが現状です。