主演映画『レイブンズ』が公開中の浅野忠信。ゴールデングローブ賞で助演男優賞を受賞するなど充実著しい浅野は、なぜ日本ではなくアメリカで多くの作品に出演するようになったのか。(全3回の1回目/#2、#3を読む)
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アメリカ行きを決意してから15年、ずっと戦い続けてきてやっと認められた
――ゴールデングローブ賞で助演男優賞(テレビ部門ドラマシリーズ)を受賞(『SHOGUN 将軍』)したときの、英語で披露したスピーチが国内外で大きな話題を呼びました。全身で喜びを表現していましたが、それにしてもなぜ、あれほど喜びを爆発させたんですか?
浅野 やっぱり本気でやってきたからですね。授賞式後の記者会見でも言いましたけど、その前に発表されたエミー賞で賞を逃して、ずっと落ち込んでいたんです。
ところがハリソン・フォードさんや大勢のハリウッドスターがノミネートされるなか、なんのコネクションもなく、ただただアメリカに乗り込んでいった日本人に対して、ゴールデングローブ賞は賞をくれた。「あ、こんな俺でも賞をもらえるんだ!」と思って、すごく嬉しかったんですよね。
――『マイティ・ソー』(2011)でハリウッド作品に初出演して以降、アメリカで続けてきた仕事が評価されたという感慨もあったわけですよね?
浅野 ええ。『SHOGUN 将軍』では、これまでいろいろな役で培ってきたものを集大成的に出すことができて、これが認められないなら自分は今後なにをすればいいんだろうって。万全な環境では決してなかったですけどね。製作のFXプロダクションは莫大なバジェットを用意してくれましたけど、現場はまだコロナ禍にあって過酷な状況でした。
でもそのなかで必死になって戦って……ただそれは『SHOGUN 将軍』に限ったことではないんです。アメリカに行くと決意したときから、約15年ずっと戦いつづけてきて、アメリカのエージェントから「アメリカで活躍したいなら日本でまず活躍してくれ」と言われて、日本の作品にも必死で取り組んできて、それがやっと認められた。だから「やった!」って。自分のやってきたことが間違いじゃなかったと、自分自身で実感できたこともすごく大きかったと思います。
――本当に評価されるべき人が評価されたという嬉しさが、われわれにもありました。
浅野 しかもそのあと発表されたクリティック・チョイス・アワードは、授賞式を欠席したにもかかわらず、僕に助演男優賞(ドラマシリーズ)をくれたんです。アメリカという国が本当にフェアに、いいものをいいと言ってくれることに感謝しましたね。